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  • 未来教育ワークショップ
  • 2015.02.05

未来教育ワークショップ in まつど 「子どもとおとな、学び合ってますか?」開催報告

主催者の想い

2015年1月18日(日)14時から17時まで、松戸市勤労会館において、未来教育ワークショップ in まつど 「子どもとおとな、学び合ってますか?」を開催しました。このワークショップは、未来教育ワークショップコーディネーターの説明会で久しぶりに再会した3人で企画し、人々が幸せでいるための政策言語研究会が主催したものです。

当日の進行は、教育学部卒業なのに、子どもの教育すら考えてこなかったことを後悔している白井宏之(松戸市役所)と大学教育に疑問をもつ大学生の内山裕介(うっちー/NPO法人ROJE学生スタッフ)が行い、菅谷 宏一(すがや対話工房)は当日参加できませんでしたが、企画をサポートしました。
また、準備は、政策言語研究会のメンバーが行いました。

当日のゴールは、「多様な人たちと対話することで、違いや共通点に気づき、新たに生じた疑問(問い)から、次の行動のステップを考えるきっかけにする」としましたが、その想いは、「教育の専門家でない人々でも、教育について考え、話し合う機会があるといいな」ということです。そのためには、参加者それぞれが、等身大の「わたし・あなた」で、当事者として話し合うようにしたいと考えました。

参加者は19名。保護者、学生、先生、公務員、議員、主夫、NPO関係者、企業等の人材開発をしている人、ファシリテーター、そして話し合いには加わりませんでしたが、2歳と5歳の兄弟と保育者も同じ場に参加してもらいました。神奈川や東京から本当に多様な人たちに松戸(千葉県)まで来てもらえました。

学びの対話ワークショップ

ワークショップの前半は、学びの対話ワークショップです。教育についての対話を始める前に、まずは、自分自身がどんなことを大切にして学んできたのかを確認するために行いました。

慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 井庭崇准教授の研究室が開発した「ラーニング・パターン」を活用しました。ラーニング・パターンは、自律的で創造的な学び方のコツをパターン・ランゲージという形式でまとめたものです。どのような状況でどのような問題が生じやすく、それをどのように解決すればよいのかの発想がまとめられています。

40のパターンの中から12を選択し、2人1組で、自分自身の学びの経験を語り合いました。本当に沢山の経験をされている方から、これから経験を重ねていく人まで、でも、ご自身が経験してきたことから得られた学びほど確かなものはないかもしれません。

教育について話しをするとき、時に自分自身がどんな学びをしてきたか、どんなことを大切にしているかを離れて、あるべき教育論を口にしている時があるかもしれません。このワークショップは、そんなことが起こりそうなときに、ふと自分自身の今ここに、立ち戻れるきっかけになれるかもしれない、そんな可能性を感じました。

未来の教育について、 あなたが考えたい『問い』は何ですか?

後半は、ワールドカフェです。カフェホストは、うっちーです。

問いは、あえて、「未来の教育について、 あなたが考えたい『問い』は何ですか?」にしました。

「どうすれば、人と社会は変わるんだろう?」って考えた時に、「探求すること」と「表現・行動すること」を繰り返すしかありません。そこで大切なことは、「意図」と「問い」です。

参加者のみんなに、問いを持って帰って欲しいというホストの気持ちがこもった「問い」です。

そして、でてきた問いが、これです。

  • 主体性がある・育つ・個性を生かす  最低限のこと育てる  ← どう関わるのか?
  • 育てるのか、育つのか、成長にどんな風に関わるのか?
  • 自ら「学ぶ力、考える力」を育てる教育とは
  • 最低限の義務教育とは何か?誰の責任か
  • 一斉・全体「皆で協力していっしょに」  個の尊重「ちがいを大切にして、個性を生かして」  と、どうやって、教育は共存させるのでしょうか
  • 子どもの教育に対する家庭の役割とは?
  • 子ども(小学生)の基礎教育を高める教育と課題設定能力を高める教育について、両方
  • 個性を伸ばし、多様性を認める教育の必要性について
  • 未来に求められる人材とは?
  • 子どもに、何をもって覚えられたいですか?
  • ひとりひとりの“良さ”“才能”が開花されるための「教育」とは?
  • 将来の日本の教育をどういう形のものにしたいか?(知識だけを教育というのか? 人としての形成・モラルなどは?)
  • 私たちが生きがいをもって生活していくために必要な教育って何ですか?
  • 自分からワクワクして学べる教育って?
  • 良い教育の在り方とは、どのようなものか?

また、新たな教育を語り合う場が広がるといいなと思います。

振り返りの時間

静かな振り返りの時間の後、「気づきのシート」に記入してもらいました。

それを共有してチェックアウトです。

今日一日の体験を通じて、あなたが得た気づきや発見には、どんなものがありましたか?

  • 問いの先について話したかった
  • 今日の話し合いが、どこにつながるのかが大切
  • 難しい、キレイな言葉に酔ってはいけない
  • これまでの分野では「やりつくした感」を持てている。次に行く時が来ているらしい、今か、もう少しあとか・・・
  • 教育の定義はとても広い。主体、客体が多様であり、誰から誰への教育なのか、何を目的とした教育なのかをはっきりさせないと教育について議論してもあいまいになってしまう
  • 未来に求められる人材とは、そのために、今から何をしたらよいかの勉強会を開きたいと思いました。
  • 教育とは育てるのではなく、本人を育つ(学ぶ)気にさせること
  • 大人との対話も楽しい
  • 教育に関わる人たちにはたくさんの人がいる(家庭-学校-社会、こども-おとな、個人-社会)
  • 教育には時間軸がある
  • 教育はひとりひとりの為であると同時に社会の為でもある
  • 教育にはたくさんの要素がある
  • 日本の教育には、本当に目的があるのだろうか?という問い
  • 勉強、学力への関心が教育を論じる際に、どうしても意識されている
  • 教育の社会化が議論されにくいのだろうか
  • 家庭、学校、社会での教育について学んできて、全てが総合的にうまく回らないと機能しない
  • でも、やはり家庭が教育に与える影響は大きい
  • 知っているようで実はよくわかっていない「教育」の意味、誰の為、何の為に教育があるのか、わからないことがわかりました
  • 社会のゆがみや社会の都合で行われてきた一遍教育。そのゆがみは個をつぶし想像力を減少させる。教育は、家族のワーク・バランスとともに家族の時間を含んだ“育ち”を大切にしていくものだと思った
  • 皆さんが教育にさまざまな強い思いがあることに、感動しました
  • 突き抜けるための学び方
  • 問いを皆で考えるのは難しい
  • 自主性、主体性が育つ教育をするためには、社会全体の協力が必要
  • 教育について考えるとき、成人(企業)を中心として発想していたが、考える領域を広げることが出来た

今日一日の体験を経て、あらためてあなたの教育に関する願いを語るとすると、どんなことでしょうか?

  • 「教育」について話し合うことは大切
  • 現場を巻き込まないと進展はない
  • 主体的に活き活きと生きていける人が育って欲しい
  • 私たち一人一人が個性を発揮し、生きがいをもって生活できることを目的とした教育が広まることを願う
  • 「志やビジョンをもたせる」「個人を輝かせる」「自分で判断できる」→学校、家庭、社会・・・特にここ(社会)でやってみたいです
  • 教えるべきことは、「学びたい気持ち」をどう育てるのか
  • 「頭の働かせ方」とどう教えるのか。それを大人が考え続けてあげることが大切であるということ
  • “個”という種をどうやって育てていけばいいのかな~
  • “個”という種を十全に開花させたい→それを支える社会づくり
  • “個”という種→自分の子ども、施設の子ども、関わり合う子ども→世界の子ども、大人→人類全て
  • 何で教育するのかという目的を、教育に関わる方々(つまり皆)で共有していければいいなと思いました
  • 個の確立と尊重を第一義とする教育への思いが広まって欲しい
  • 教育への不信、あるいは重さと、未来の不確かさがマッチしにくい。未来って何かも話したいですね。
  • 皆が幸せを感じられるには、何が必要か。
  • 学校現場だけが学びの場ではなく、日常生活全てが学びの場なので、そういう考え方ができる人を増やしたい
  • 多様な人たちが「教育」を考える機会
  • “学ぶこと”をやらされる事ではなく、自発的楽しい事だと気づいて欲しい。幸せの中で学べる方法があるのだから教育方法を見直して欲しい
  • 教育という言葉を変えて欲しい。学びあいとか、成長とか、実現、実行
  • 教育というフィールドで、皆が自分のストーリーを編んで、そこから何かが自然と生まれていく場づくりをしたい
  • 基礎教育に加えて、課題設定力の高いリーダーを輩出する教育の仕組みが小学校からあること
  • 一人一人が幸福感を得られる自分らしさを表現出来る社会が訪れること

企画者3人の感想

実をいうと、未来教育ワークショップコーディネーターの説明会や研修会で、内山さんや菅谷さんが来ていることに気づかず、後で、フェースブックで知ったんです。でも、それをきっかけに、実際にワークショップを開催することができて、一人で開催するのとは全然違う楽しさがありました。

しかも内山さんは私の長女と同い年という偶然。そんな多世代、異業種の人たちが学び合う場を作ることが、やっぱり教育を変えていくんだろうなという想いを改めて感じました。お二人には本当に感謝です。

また、一緒に楽しい場を作ってくれた5歳と2歳の兄弟を含んだ参加者の皆さん、こんな機会をつくってくれた未来教育会議の事務局の皆さん、本当にありがとうございました。

(白井宏之)

ふだん、大学生中心で活動しているのですが、どうしても大学生だけでの活動での影響力には限界があると感じていました。ですので、未来教育会議のビジョンに強く共感しており、今回偶然白井さんにお声掛けいただけたことで、ワークショップに参加できたので、とても嬉しかったです。ワールドカフェで「問い」を考えるという、終始もやもやとした場になりましたが、おそらく自分が意図したのは、そういう場だったのだと思います。「何が問題・何が正しい」のという自分の評価・判断を交わす議論ではなく、「そもそも私たちは何を探究したいのか」ということを焦点があたりました。この日を通して何かが変わるわけではありませんが、ここで生まれた対話やご縁が、未来の教育へ必ずつながっていると思っています。この場を企画して頂いた白井さんをはじめとする松戸市役所の皆様、長時間ご一緒させて頂いた参加者の皆さま、本当にありがとうございました。

 (内山裕介)

今回は正直なところほとんど関われませんでした。こちらに企画者として感想を書くのも大変恐縮なのですが、「菅谷さんは当日参加されていないので、難しいかもしれませんが、でも、本当にありがたかったので、ぜひ、お願いします」という白井さんの言葉に背中を押されてコメントします。

私は高校・中学・学習塾の講師や家庭教師を経て、現在「勉強カフェ」という大人の勉強場所の運営と「すがや対話工房」名義での話し合い・学び合いの場づくりを行っています。10年近くさまざまな立場から教育・学習支援に関わっていて思うことは、「教育については誰でも経験があるし誰でも語れる」ということです。

ほぼ全員が小中学校の教育を受けてきています。だからこそ、(多少のズレはありますが)教育について語れます。「学校って◯◯だよね」「先生は□□だ」と。しかし、これからの教育を描くとき、特に教育政策といった分野では、個々人の体験をある程度相対化していく必要があると思います。

一人ひとりの体験してきたことは同じようで違っている。そんな体験を共有したうえで、「50年後、100年後に僕らや僕らの子孫が幸せに生きているために、いま必要な教育はなんだろう?」 そんな大きな問いについて考えることが必要になるように思います。

私は松戸市と同じ常磐線沿線の取手市に住んでいまして、通り道にこのような場が生まれたことをとても嬉しく思います。教育に対する経験を共有し、未来への思いを描く場が、これからも続いていくことを強く願っています。

(菅谷宏一)