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  • 未来教育ワークショップ
  • 2016.09.05

7月30日(土)未来教育ワークショップ@築地本願寺 vol.6 実施報告

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今回は「これからの時代に求められる力から子育てのヒントを考える」と題してリクルートマネジメントソリューションズ コンサルタントであり東京都公立幼稚園・こども園PTA連絡協議会 副会長の桑原 正義氏をゲストスピーカーに迎え、企業の人材育成から見える子育てのヒントを考えていきました。

 

いま社会に出ていく若者の中で、自分が思い描く成長を遂げられず苦しむケースが増えています。それだけ現在の仕事や職場環境は困難が多く、そこを生き抜いていく力も親の世代とはまた異なってきています。そこで今回は、これからの時代に必要な力とは何かを掘り下げつつ、そうした力を育む子育てについて考えていきました。

 

前段では、主催者の山田より、6月12日(日)に東京大学駒場キャンパスにて開催された“2030年の未来の社会・企業の姿”を描き出す「21世紀未来企業プロジェクト」の活動報告会の内容を共有しました。2030年にはどのような社会が訪れるのか、そこで賞賛され、生き残る企業とはどのような企業かを『2030年の社会・企業の4つの未来シナリオ』として統合し、未来に起こりうる4つの世界に関して描かれたビジュアルなシナリオです。

教育を考えるために企業を考える、未来を考えるためにシナリオを作る

社会・企業ー教育

オープニングは山田から、教育を考えるために社会・企業を考えるに至った経緯を話しました。経緯と言っても6/12のシンポジウムでの話をそのまま伝えただけですが、私自身、教育と社会・企業が鏡の関係であるという説明に納得しました。思い出したのは、ジョン・アダムスの言葉。

 

I must study politics and war
that my sons may have liberty to study mathematics and philosophy.
My sons ought to study mathematics and philosophy, geography, natural history, naval architecture, navigation, commerce and agriculture
in order to give their children a right to study painting, poetry, music, architecture, statuary, tapestry, and porcelain.

アメリカ大統領ジョン・アダムス(1735-1826)

 

今、政治と軍事を学ばなくてはならない。
子供たちの世代に、数学や哲学を学ぶ自由を残すために。
私の息子たちは、数学、哲学、地理、自然史、造船工学、商業、農業を学ばなくてはならない。
そのまた子供たちに、絵画、詩、音楽、建築、彫刻術、織物、磁器を学ぶ権利を与えるために

和訳は「クレイトン・クリステンセン教授、破壊的イノベーション」より

 

「未来の社会・企業の姿を予測して、必要な力を身につけるための教育を考える」
「創りたい未来のために、今学ぶものを選ぶ」

いずれにせよ、社会・企業と教育は繋がっている。そして、未来を考えるところから始まる。

では、どうやって未来を考えるのか?

そのアプローチとして使ったのがシナリオプランニングです。
シナリオプランニングはビジネスの文脈では、シェル石油がオイルショックを乗り切った 事例として有名です。そもそもは、軍事戦略を練るために第2次世界大戦中にアメリカ軍で研究された「起こりうる未来展開を予想するストーリー」を組み立てていく思考実験でした。それをビジネスの世界に応用したのが、ランド研究所に所属していたアメリカの未来学者ハーマン・カーンです。そして70年代初頭に、カーンの知遇を得たシェルのプランナー、フランス人のピエール・ワックを中心に、当時のトップマネジメントの励ましを受けつつ、エネルギービジネスにおけるシナリオプランニング手法が構築されました。
ちなみに、1973年当時、「オイルショック」は異端のシナリオで、その実現可能性と戦略的対応を、企業組織全体で検討し準備させるには、トップの側にも勇気が必要だったそうです。

これが適応型シナリオプランニングの源流ですが、今回はもう一つ変容型シナリオプランニングについて考えました。

この2つがまさに先の質問の2つに該当します。

適応型:「未来の社会・企業の姿を予測して、必要な力を身につけるための教育を考える」
変容型:「創りたい未来のために、今学ぶものを選ぶ」

という前段の背景情報の設定から、本題の「これからの時代に求められる力」へと対話はシフトしていきました。

これからの時代に求められる力から子育てのヒントを考える

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当日は企業の人材採用・育成の現場での話をいろいろ聞かせていただきました。
中身について全ては書き起こせないので(グラフィックレコーダーにいて欲しかった(^^)
自分の感想が中心になるのですが、最初は「最近の新人は・・・」、と当時の自分たちのことを棚に置きながら、考えていましたが。そもそも自分たちの頃と比較していること自体が間違っている気がしました。
今の時代はITやビジネススキルは明らかに自分たちの頃より高度なものを求められている気がします。その中で期待値に届かないのは、ある意味当然。また、考え方や価値観は大分変化してきていると感じるので、そこでのギャップが出るのも当然。では、企業の新人の変化から、これからの時代に求められる力として何を拾えば良いのか・・・。
対話の中で一つ印象に残ったのは、”不条理に対応する力”です。
「理由がはっきりしないことに対して、何かを強制されることに上手く対応できない」ことが多い。
「そもそも対応する必要があるのか?!」という議論もありましたが、「黙って(仕方なく)上司に従っていた自分たちの頃に比べると、理由を求める人が多い」というのが、ここでの見解でした。
敢えて極端に解釈すると、
「今の若手はルールのあるクリーンな競争に慣れすぎている?!」
「理由が明快でないことには上司から言われようと屈しない?!」
もう一つ話題に出たのが、「根拠のない自信」が必要。ある学校の先生から家庭で身につけて欲しい力として挙げられたものという話でしたが、言語化できないのですが、何となくの納得感は高かった気がします。これも理由がないという点では共通したものでした。
こうした対話から、言葉に落とすと当たり前ですが、「理屈ではない世界を体験する」ということが必要という結論が導かれました。
「これからの時代に求められる力から子育てのヒントを考える」というテーマからすると「世の中に合った?将来像」というのが導かれて、そのために何をするかという対話も期待していたのですが、そこは予測不能、コントロールしないダイアログでしたので致し方ないところ。
思わぬ副産物として、見つけたのはその将来像は誰のものか?ということでした。
「世の中に合った?将来像」
「親がこうなって欲しいと願う将来像」
「親が自分の背中で示せる将来像(大人像)」
「子供が描く将来像」
実際は組み合わせになるのでしょうが、偏った押し付けにしたくないと思いました。
余談ですが、夏休みに入り、明らかに家の中でエネルギーを持て余している3歳の長男、「どうして、落ち着いてくれないんだろう・・・」と悩んでいた時に、「そもそもこの考え方が違うのかもしれない」と気づきました。
3歳の男の子は暴れて当然、部屋の中に押し込めておくことに無理がある。前回のワークショップできた森の学校の話の様に「森でヘトヘトになるまで遊ばせることができれば、ご飯を食べるのにだだこねたり、夜遅くまで起きていることもなくなる」
どうやって落ち着かせるかではなく、エネルギーを発散させる方法を考えないといけないですね。今ある環境の中でのやりくりは必要だけど、何を是とするか間違えないようにしないと、問題は解決しませんね。
  • ライター

山田竜也

インディージャパン共同創設者。現在は、イノベーションを通した新規事業開発、組織開発、人材育成を支援している。
電気通信大学機械制御工学専攻修士 MIT Sloan Executive MOT 日本ファシリテーション協会所属 IAF認定 Certified Professional Facilitator 電通国際情報サービスを経て、iTiDコンサルティング創業メンバーとして参画。米国技術コンサル会社との様々なプロジェクトを通してものづくりに対する神髄を学ぶ。その後、技術が分かるファシリテーターとして製造業を中心に製品開発プロセスや組織変革のコンサルティングを手掛ける。コンサルティング現場での実践知を基に、思考力、コミュニケーション力、問題解決力、イノベーション人材をテーマとした研修プログラムを開発・提供している。

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