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  • 未来教育リポート
  • 2015.09.14

先生たちの“キャンプ”2日目! 教育のビジョンをみんなで見つめる【Camp 21c for Teachers 2日目リポート】

8月10日(月)~ 8月12日(水)の2泊3日、山梨県にある保健農園ホテル・フフ山梨にて開催された「Camp 21c for Teachers ~先生が21世紀スキルを楽しく体験的に学ぶプログラム~」。この記事では、4回にわたってプログラムのリポートをお届けしています。

 

第1回目のレポートはこちら→【Camp 21c for Teachers 1日目リポート】

第2回目のレポートはこちら→【Camp 21c for Teachers 講義リポート】

 

第3回目となる今回は、キャンプ2日目の様子をご紹介します。

 

2日目の朝は、富士山を望む丘の上での「太極拳」から始まりました!

(なかには筋肉痛になった参加者もいるとかいないとか…)

オープニング

まず、1日目のことを振り返り、簡単なグループ対話でウォーミングアップ。その後、2日目のプログラムの主な進行役を担う、有限会社チェンジ・エージェント代表取締役社長兼CEO・小田理一郎さんが、簡単な自己紹介も兼ね、本日のプログラムの背景を説明しました。

 

小田さんは自己紹介として、自らがドネラ・メドウズの『もし世界が100人の村だったら』の話を聞いたことをきっかけに会社員を辞め、自己の経験を生かして社会に貢献することを決意し、NGOなどの仕事を始めたことを語りました。

 

また、『学習する学校』の著者ピーター・センゲがかつて語った「産業システムは教育システムとの双子のシステムである」という言葉を挙げ、その内容を説明しました。

「例えば、チャイムが鳴ったら席につく仕組みは、工場で働くためのシステムと同じ。産業システムを教育システムとして学校に取り入れ、学校での学びが社会に出て産業へ…と、グルグルまわっているんです」(小田さん)

 

2日目のプログラムは、ピーター氏が掲げた「チームの核となる学習能力」、すなわち「自らを動かす力」(ビジョン)・「共創的に対話する力」(チーム学習)・「複雑性を理解する力」(システム思考)を織り交ぜているとのこと。参加者の期待感を高めました。

30年後をイメージするワーク

「最高の未来と最悪の未来を考える」

 

1.個人ワーク

 

教育の成果が出るのは30年後と言われています。そのことを踏まえ、今教えている子どもたちの30年後をイメージ。「最高の未来」と「最悪の未来」の2つを考え、子どもたちや自分たちにとって重要だと思うことがどのように変化するか、2本の折れ線グラフで表現するワークです。

 

2.グループワーク

 

4~5人ほどのグループごとに、互いの「最高の未来」と「最悪の未来」のグラフを共有し、意見を述べ合いました。さすが、多様な視点で社会を見つめる参加者のみなさん。さまざまなグラフに仕上がっていました。例えば、下記のような未来…

 

・「コミュニケーション能力」

最高の未来:相互理解

最悪の未来:対立

 

・「再生医療技術」

最高の未来:生命の大切さを知る

最悪の未来:生命を使い捨てる

 

・「失敗」

最高の未来:次への意欲

最悪の未来:くじける

 

3.全体共有

 

グループワークでどんな「問い」や「洞察」があったか、という観点で全体共有。下記のような内容が発表され、そこでも意見が交わされました。

 

・「30年後の幸福って何だろう」という問いに対し、「自分で考える喜び」「他者と共有する喜び」という洞察があった。

・「危機への気づき」がキーワード。「気づけば社会はよくなるが、気づかなければ社会は消滅する」という洞察があった。

・「教育が重要。教育のなかに“危機を見抜く力”や“本能”が失われているのではないか」という問いがあった。

 

特に、最後の“本能”という言葉について、みなさん個々に想いがあるようで、意見が飛び交い、このあと大論争が起こりました。

今起きていることを“深掘り”するワーク

「氷山モデル」

 

1.ゲーム

 

ワークの説明の一環として、下記のゲームを行いました。

 

(1)人差し指を立てた状態で、腕を頭上に掲げる

(2)それを見上げた状態で、掲げた指を時計回りにまわす

(3)まわしながら、腕をゆっくり下げていく

(4)見下ろす状態までくると、まわしている方向が反時計回りに変わっている

 

そこにいた全員が、驚きを隠せませんでした。このゲームは、同じ物事でも、見る角度によって見え方が異なる、ということを体感させてくれるゲーム。全体像をいろいろな角度から見ることの重要性を理解しました。

 

「氷山モデル」は、このゲームと似ています。目に見える「出来事」(氷山のてっぺん)の下には、目に見えない「パターン」「仕組みと構造」「根本の前提」(水面下の氷山)が潜んでいる、ということを表しています。

 

2.個人ワーク/グループワーク

 

まずは、個人で「今、地域や学校、教室で起こっている出来事」をポストイットに書き出しました。その後、グループのメンバー同士で内容を仕分けし、深掘りするテーマを選出。そのテーマについて、30年の軌跡を描くと同時に、その根っこにある人、意識、問題などについて話し合いました。

 

3.全体発表

 

グループワークで得た洞察やジレンマについて発表し合い、下記のような意見交換が行われました。

 

【内向き志向の子どもについて】

・内向き志向の子どもは、他人とつながる能力が低い。

・とはいえ、つながりたい気持ちは持っているはず。

・根本には、「これまで評価されず、人とつながる自信がない」「周囲の大人の能力低下が前提にある」などの原因があるのではないか。

・一方で、「SNSの進化で、長けている人も多いのでは?」という考え方もある。

 

【教育に求められる力について】

・グローバル化や技術の高度化により、教育に求められる力が増えた。

・一方で、生産者(学校)と消費者(企業)、原産者(家庭)のニーズにズレがあるのではないか。

・そもそもグローバルって何だろう

・生徒につけたい力って、何だろう

自分と向き合うウォーキング

この日のワークを振り返り、あらためて自分と向き合う時間。一人でウォーキングに出かけ、だれともしゃべらず、好きな場所で考えます。

 

「自分の役割って、何だろう」

と。

OST(オープン・スペース・テクノロジー)

この日、最後のプログラムは「OST(オープン・スペース・テクノロジー)」でした。今この場で話し合いたいことのある人が名乗り出て、オーナーとなりテーマを提示。同テーマで話し合いたいメンバーが自由に集まり、自由に話し合うという内容です。なお、このキャンプ自体も、過去に行われたOSTから生まれた企画。自由な話し合いのなかから、素晴らしいものがかたちづくられる可能性があるのです。

 

オーナー候補にチラホラと手が挙がり、8つのテーマが決定。本当に自由なスタイルで、話し合いが行われました。

 

・先生とは何者か?

・先生はどうしたらシェアハウスに集まりますか?

・あなたのとっておきの授業は?

・先生と一般人の交流の場、作りませんか?

・教える場から学びの場に、教室を変えるには?

・20代会社員20人と協働して授業をつくるなら、どんな授業ならワクワクしますか?

・実用的な学び、実学って何?

・生徒の幸せとは何か?

 

OST終了後、みなさんの表情を見ると十人十色。まだまだ言い足りないことがありそうな人もいれば、他者の意見を取り入れてスッキリした表情の人もいました。

 

その十人十色の感情は、その日の振り返りのコメントにも表れました。

 

「OSTでとっておきの授業について話し、あらためて気づいた。本当に教師になりたくて、なれただけでも幸せだということに」

「OSTで『先生とは何者か?』について話し合えた。ずっと聞いてみたいことだった。『子どもの側にいて考え続ける人たちなんだ』とわかって、泣きそうになった」

「2年間教師をしていて楽しかったのに、最近、問題にぶつかり自信を失っていた。今では教壇に立つのが楽しみになっている」

という前向きなコメントもある一方で、

 

「本質について考えていたら、わけがわからなくなった」

「教員になったらやりたいと思っていたことは、もう叶えてしまった。この先、システムや手法でごまかすのだろうか。教員という肩書きなしではいつも自分に自信がない」

「生徒には『人は人』と言うくせに、自分は人と比べてしまう。実は、集団で話すのが苦手」

という自己にあるモヤモヤを話してくれる人もいました。

 

キャンプも残すところ、あと1日…

参加者のみなさんにどんな変化が生まれるのでしょうか。