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  • 未来教育リポート
  • 2015.06.22

なぜ日本発の算数塾サカモトセミナーは6か国へフランチャイズ展開できたのか

ガラパゴス化した日本では、難問と対策法が共進化する

日本には多くの予備校や塾が存在し、それぞれが生き残りをかけてしのぎを削っている。私も受験産業の1つである予備校に10年以上所属し、模擬試験を作成したり、大学入試で合格点を取るための授業をしたりしてきた。内部にいるときには、そのことに疑問を持ったことはなく、当たり前のことのように感じていた。

 

しかし、3年ほど前から、イギリス系のカリキュラムを中心に、外国の教育カリキュラムに関心を持つようになり、問題に目を通すことが多くなった。そのときに気がついたのは、日本の難関中学、難関高校、難関大学の問題は、イギリス、シンガポール、マレーシアなどで扱っている問題に比べて圧倒的に難しいということだ。これらの国では統一テストがあり、そのテストの結果で進路が決まってしまうという意味では競争にさらされている。だが、統一テストの問題の難易度はそれほど高くないので、難問を解くためのトレーニングは必要ないのだ。

 

一方で、日本の難関校は、独自の問題を出題するため、入試問題の難易度に上限はない。そして、受験産業は、受験生を合格させるために入試問題の出題傾向を分析し、必勝法を授けていく。それに対し、出題する側も知恵を絞って新傾向の問題を考え出してくるので、学校側と受験産業とのイタチごっこにより、問題は次第に複雑化し、難易度が上がってくる。

 

まさに、ガラパゴス化した環境の中で共進化が起こり、様々なタイプの難問と、それらを解くための必勝法とが生み出されてきたのだ。

 

このことに気づいたとき、日本の受験産業が生み出したものを海外へ展開することはできないのだろうかと考えた。

 

難問を解くために磨かれてきた教え方の中には、日本独自の優れたものがあるのではなかろうか。

また、日本の参考書は、海外のものに比べて圧倒的に分かりやすい。現在、日本では、話し言葉で分かりやすく語るスタイルが主流になっている。このように日本で独自に進化したスタイルの参考書スタイルを海外に持ち込んだら勝てるのではないだろうか。

 

そう考えた私は、難関大学の物理の問題を簡単に解けるようにと生み出した「田原の物理」を、話し言葉で語るスタイルの参考書にする方針を固め、サンプル原稿を書いて英語に翻訳し、シンガポールの出版社に持ち込んだ。編集者が日本に住んだ経験があったこともあり、反応は良好で、半年間、シンガポールに何度も足を運び、ミーティングを重ねながら内容をすり合わせていった。しかし、最終段階で編集長からGOサインが出ずに企画は没になった。編集長とは話がかみ合わなかった。僕には見えている商品価値が相手には見えておらず、相手には見えているシンガポールの事情が僕には見えていなかったため、話は平行線をたどり、海外で仕事をすることの難しさを感じた。

 

シンガポールに頻繁に通う中で知り合ったシンガポール人から次のような質問をされた。

 

「マサトは教育ビジネスをやっているんでしょ。じゃあサカモトセミナーを知っている?有名でしょ?」

 

「サカモトセミナーのケンジは、友達なんだ。紹介するよ。」

 

正直言って、それまで、サカモトセミナーという名前を聞いたことがなかった。シンガポール在住の日本人が始めた個人塾かなと思った。シンガポールの教育事情について知りたいと思っていたので、ケンジさんを紹介してもらうことにした。

 

教えてもらった住所を手掛かりにたどり着いたところは、公団住宅のような場所で、サカモトセミナーはその地下にあった。ベルを鳴らすと中から、細身のにこやかな男性が登場した。それが、サカモトセミナーの若林憲司さんとの出会いだった。

 

若林さんからサカモトセミナーの話をうかがって驚いた。

 

サカモトセミナーは、大阪にある難関中学対策の算数塾が母体で、シンガポールを海外展開の拠点として、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、オーストラリアへフランチャイズ展開している教育プログラムだったのだ。特にインドネシアでは算数塾としては最大のシェアを持っていて、街にサカモトセミナーの看板が溢れているのだそうだ。そして、それらの海外展開を統括しているのが目の前で微笑む若林さんだったのだ。

 

それから、シンガポールに行く度に、若林さんに会いに行くようになり、若林さんから、多くのことを教わった。

 

若林さんが経験してきたことは、海外進出を考えている教育ビジネスのプレーヤーにとっては貴重な成功事例であり、若林さんの考え方は、海外で働きたいと思っている若い人にとって大きなヒントになる。

 

サカモトセミナーは、まさに日本の受験産業の中で磨かれた方法論を、海外へ持ち込んで成功した事例だった。しかし、それは、決して簡単なものではなかったはずだ。いったいどのような方法で成功したのだろうか?

 

今回、若林さんにお願いしてインタビューをさせていただき、その秘密を探ることにした。

海外で働くことは、子どものころからのあこがれだった

―― 日本で中学受験をする小学生を対象にしていた算数塾であったサカモトセミナーがシンガポールに進出したきっかけは、どのようなことだったのですか?

 

約20年前、日本は少子化が進行するのが確実視されていました。大阪本校は小学生対象の塾でしたので、マーケットが縮小するなか、先行きは不透明でした。日本の算数を子供の人口が増加している海外に普及することを決定し、進出先を検討していました。東南アジアのシンガポールは近隣諸国に比べて教育レベル、教育熱とも高く、可能性があると思われ、ここに拠点を置くことにしました。

 

―― サカモトセミナーの社員の中で、若林さんがシンガポール進出の担当になった理由は、どのようなことだったのですか?

 

最初から海外へ進出するプロジェクトに入っていたんです。教材を英語に翻訳するのに3年かかったのですが、その作業から関わっていたんです。

 

海外に住んでまでサカモトセミナーを広めたいという方は、同僚の中ではいらっしゃらなかったんです。他の先生方は国内で中学受験を目指している専門家ばかりでしたので、先生方の目標も自分が担当している子どもたちが希望している中学に入れるように指導していくというものでした。

 

私の場合は、もともと海外というものに興味があったんです。前の会社を辞めて、次の職を探していたときに、サカモトセミナーの広告を見て、「サカモトセミナーは、オーストラリアでも展開しています」と書いてあったので、それを見て、試しに行ってみようかということで面接を受けに行ったのがきっかけだったんです。

 

ですから、海外への展開を考えていらっしゃるんですかということを面接で聞いて、そちらのほうをできれば担当させていただきたいということを最初に言いました。

 

―― 若林さんは、いつごろから海外で働きたいという希望をお持ちだったんですか?

 

子どものころから、海外で働けたらいいなという憧れを持っていました。それで、神戸市外語大学へ進みました。母子家庭だったので、最初の会社に入ったときは、実家から会社に通えるというような決め方をしました。そこで働きながら、自分が得るものもいっぱいあったんですけど、海外への思いというのは捨てられないなというのは常にありましたね。

 

―― 今の学生の中には、夢をかなえるためには、正規のルートを通らないいけないというイメージを持っている人が多いように思います。若林さんの場合には、そのときにできることをやりながら、じわじわと夢に近づいていったという感じですね。

 

そうですね。前職は、女性下着を扱っている商社でしたので、畑違いだといえば畑違いなんですけど、結構、役に立っていることが多いんです。セールスレディーさんはほぼ全員女性でした。現在の教育活動では、フランチャイジーには男性もいますけども、女性のほうが圧倒的に多い。特にシンガポールに来たら、学校の先生はほとんど女性ばかりです。そういう関係で、女性に対して教育をしていくということが、前職とオーバーラップしているわけです。

 

その商品をどうやって販売していくかというときに、前の会社で組織的に販売していくということをやっていて、そういうノウハウが、今思えば役に立っていますね。

 

難関中学受験の文章題を解くために磨かれたサカモトメソッド

――サカモトセミナーは、算数を教える独特の方法「サカモトメソッド」が特徴だと思います。サカモトメソッドの特徴を教えてください。

 

文章題の解き方に大きな特徴があります。

 

算数の文章題には、いろんなタイプがあります。和差算、分配算、倍数算、鶴亀算、方陣算とか、いろんな問題のタイプがあるんですが、問題のタイプが違えば解き方が違うというのがこれまでの既成概念だったんですね。

 

ところがサカモトメソッドというのは、文章題と名のつくものであれば、ほとんどのものがたった1つの方法で解けてしまうというのがセールスポイントなんです。

 

それが、次の3段論法になっています。

 

第一段階 関係把握 : 出題されているデータを論理的に表形式にまとめる。

第二段階 図解 : 表を線分図に直す。

第三段階 立式 : 数式を書いて解く。

 

この3段階のステップで論理的に解いていくというのが、サカモトメソッドなんです。

教材をシンガポールに合わせるのに3年間かかった

―― シンガポールに進出して、まったくのゼロからどのようにしてビジネスの足場を作っていったのですか?

 

日本人対象のマーケットは狭く、また他社がすでに進出していたので、シンガポール人の子どもを対象に展開することにしました。現地ではどのような問題を教えているのか、どのレベルの問題ならば解けるのかなどを調べようと、何度かマーケットリサーチに行きました。地元の集会所を借りて近所の子供を集めて無料の勉強会をしたり、地元の塾へ出向き、プレゼンをしました。

 

――そのとき子どもたちに教えたときの反応はいかがでしたか?

 

集会所で教えたときは、私の英語は、あまり伝わっていないなというのが、子どもたちの反応から分かりました(笑)。その当時は、まだ日本に住んでいたので、英語がこなれていなかったんでしょうね。

 

でも、シンガポールは、外国人がしょっちゅう来る国ですから、子どもたちは、そんなにびっくりしていませんでしたね。

 

子どもたちの様子を見ながら、問題を少しずつ難しくしていくんですが、ある程度まで行くと解けなくなるので、それでレベルが分かりますよね。

 

また、時計算をやらせてみたときには、基本の確認で、時計の文字盤を出して、「これは、何時ですか?」「6時です」なんてことをやったんですけど、「6時半の針の位置を示してください」と言うと、長針だけ動かして、短針はそのままなんです。その段階で、時計算をやらせるのは無理だと判断してあきらめたりもしました。

 

なぜ難しいことができないのかということを考えたら、学校では基本しか教えていないんですね。

 

次に塾の生徒にやってみたんですけど、勉強しているだけあって、ある程度はできるんです。でも、日本の中学受験の問題なんかを出すと、みんな固まっていましたね。どうしたらいいのか分からないと。こんな問題は見たことがない。これは、しょっちゅう言われました。

 

シンガポール人というのは、「こんな問題は見たことがないから、いらない」という発想なんですね。

 

マーケットリサーチをやって、日本で使っている教材は難しすぎることが分かったので、シンガポールの子どもたちのレベルに合わせて教材を作り直して、同時に英語に翻訳していきました。

 

――日本で使っている教材のほうが難易度が高かったんですか?

 

はい。そうです。実際に売ろうと思ったときに、日本でやってきた教材が、シンガポールのシラバスに比べてあまりにもレベルが高すぎたんです。そこにいきなり持って行って「はいどうぞ」とやっても、売れないんじゃないかと思いました。

 

また、シンガポール教育庁にサカモト式算数プログラムを認可してもらう戦略を立てました。

 

シンガポールは、完全に保守国家ですから、権威づけに弱いわけです。だから、教養プログラムとして認可されたら、それがセールスポイントになるんじゃないかと思ったわけです。

 

認可を受けるために、教材とサカモトのシラバスを作って提出するんですけど、片っ端からダメ出しされるんです。それを全部忠実に守って、改良に改良を重ねて、ものすごい妥協しました。それで、ようやく3年後に認可がもらえたんです。

 

1994年にシンガポールに登記をしてから3年間は、日本にいながら教材の改良を続けて、ようやく認可が下りたので、よし行こう!ということでシンガポールに乗り込みました。

 

――教材開発に3年かかったんですね。シンガポールに進出して、生徒は、最初から集まったのですか?

 

最初は、シンガポールの既存の塾を買収し、直営店としました。拠点となる直営店を経営し、かつ近隣諸国へフランチャイズ展開を行う方針を固めました。

 

買収した塾には、すでに通常の科目を勉強する生徒が通っていたので、回転費用をまずそれから捻出することにしました。

 

フランチャイズを開始するときは、新聞広告をだし、都心部のホテルを借りて、ローンチングのプレゼンテーションをしました。出席者の中に数名真剣な方々がおられ、後日フランチャイジー契約となりました。

 

以後も数か月おきにフランチャイズプレゼンテーションを行い、国内のフランチャイジーを増やしました。

シンガポール人のニーズに応えれば、口コミで広がっていく

―― シンガポール人の教育に対する考え方の特徴は、どのようなものですか?

 

進出した当時は、6年生卒業時のPSLEという全生徒の受験が義務付けられている卒業試験、さらには4年生になるときにクラス選抜を行うストリーミングイグザムという試験が課されていました。

 

このストリーミング試験では、EM1、EM2、EM3という3つのコース(レベル)に分かれます。大方の生徒はEM2となり、頭のいい子はEM1、ややスローな子はEM3に振り分けられます。規定ではその後、5年生や6年生でコース変更はできるとなっていたのですが、学校の先生方に聞くと、実際のところは途中で変更した生徒など見たことがないと言われていました。つまり、4年生の入り口で、将来のコースが決まってしまうわけです。

 

また卒業試験のPSLEでは、その結果によって、進学できるセカンダリースクール(中学校)が限定されます。あの人気名門校に通いたいと思っても、入学できません。逆に、もし最低合格点に満たなければ、留年し、6年生をもう一度繰り返します。

 

非常に厳しい環境でしたので、シンガポール人の教育に対する姿勢は厳しく、「学校の勉強の役に立たないものは、不要。」という超合理的な考えを持つご父兄が大半でした。学問を楽しむという余裕はなかったですね。

 

こちらでは現役の学校の先生が教えている塾に人気があるのですが、その理由の一つが、学校の勉強優先という背景があると思います。

 

現在は、ストリーミング試験は廃止され、PSLEのみとなりました。

 

――そのような状況だと、PSLEでよい点数を取ることが塾に通わせる親のニーズになってくると思いますが、サカモトセミナーは、シンガポール人の親にどのようにアピールしたのですか?

 

我々のプログラムは、シンガポール教育庁に認可されています。
我々のプログラムは、シンガポール教育庁のシラバスとそっくりで、シラバスに沿って教えています。

 

ということを強調しました。これが、安心材料なんです。

 

それで、同じ問題を解くんだけど、解法は違うんですよ。

こちらのほうが簡単で、可能性があるんです。

 

というような売り方をしました。

 

でも、シンガポール人は保守的ですから、

「解き方が違うんだったら、ダメなんじゃないか」

というネガティブな考えなんですよね。

 

そこをどうするか?とにかく、これを学んでPSLEでA*をとったとか、そういう実績を積むしかないんじゃないかということになりました。

 

――それで、実際に実績を積むことができたんですね。

 

そうです。最初のうちは、A*やAのパーセンテージは低かったんです。知名度が低いから、いい生徒が来なかったんです。でも、子どもたちの成績を上げていくと、父母が口コミで広げてくれるようになりました。

 

「ウチは、サカモトでやってよかった。」
「学年末試験で算数の最後の問題の難しい文章題を解けたのはうちの子だけでした。」

 

とかを、他の親に言うわけです。それで、その話を聞いた親がサカモトに来てくれるわけです。それで、次第にパーセンテージが改善されてきて、近年では80%前後がA*やAを取れるようになりました。

 

他の塾でも、同じような数字を出しているところがあるんですけど、そういうところは、入塾試験を行って学力の低い子を断っているんです。それで90%なんていう数字を出しているところもあります。我々の場合はスローランナーでも、とにかくやりなさいということでやらせます。6年生の初めにスローランナーが入ってきたら、普通は週1回なんですけど、週2回来させて、1回は6年生のクラス、1回は5年生のクラスに入ってやらせたりしています。これで、最後にBが取れたら親はそれでハッピーですね。普段から落第点のラインの50点前後をさまよっていたのが、最後にBになったらハッピーなんです。落第したら留年になりますからね。

 

――入塾のときにフィルタリングをしていないにもかかわらず、80%前後の数字を出しているというところが評価されているのですね。

 

そうですね。

シンガポールで実績を上げて、近隣諸国へフランチャイズ展開

――近隣諸国へのフランチャイズ展開は、どのように行ったのですか?

 

シンガポールでマーケットリサーチをしていたときに訪問した塾の経営者から、タイから友人が来ているから会ってみるかと聞かれ、そのタイ人の方に来塾していただき、その前でプレゼンをしました。

 

たった一問サカモト式で解いてみせたでけで、「タイ一国の権利を買わせてくれ。」と言われ大変驚きました。これまでプレゼンをすると、ほとんどの方々が何という解き方なんだと驚かれるのですが、一国の権利を買いたいと突然言われてびっくりしました。

 

後日バンコクへ行きその方の会社を訪問したのですが、自社ビルで、多数のスタッフが働くそろばん塾のオーナーでした。契約の運びとなりました。

 

それが、最初の国外フランチャイズでした。

 

 

その他の国々のマスターフランチャイジーは、知人の紹介や、サカモトの噂を聞いて来星された方と何度か顔を合わせて契約となりました。

 

 

 

――フランチャイズはどうやって見つけるんですか?

 

シンガポールのサカモト、聞いたことあるということで問い合わせがあるんですよ。その当時はインターネットが発達していませんでしたから、電話とかFAXとか手紙とかで問い合わせが来るんですよ。

 

じゃあシンガポールの校舎に来てくださいということで、デモをするわけです。

 

そうすると、誰もが驚くわけです。これはすごいということで。

 

商売を知らないという先生であっても、まず「やり方がすごい」ということに気がつくわけですね。パートナーで商売できる人というのは必ずくっついてくるんですよ。商売を知っている人が、これは差別化できるということで、一回来てもらうと、ほぼ全員がやりたいと言いますね。

 

――インターネットがなかった時代に、フランチャイジーの人たちは何を見て問い合わせてくるんですか?

 

シンガポール国内の場合は、主に、新聞広告ですね。

 

一度、フランチャイズセンターを立ち上げると看板ができます。小さい国ですから、すぐに口コミで広がっていきます。

 

それで、テリトリーを決めて、早く決めないとテリトリーがなくなってしまうよとはっぱをかけるんですね。そうすると、シンガポール国内については比較的早く埋まりました。

 

――海外からの問い合わせしてくる方は、どのようにしてサカモトセミナーのことを知るんですか?

 

簡単に言えば「うわさ」ですね。口コミは強いです。ビジネスをしている人は、いつもリサーチをしているようですね。シンガポールに日本から来た算数というのが広まっているらしいというので来る方がいますね。インドネシアの方もそうでした。タイの場合は、そろばんのフランチャイジーさんが、サカモトもやったよということで、「サカモトって何だ?」ということで問い合わせてきたんです。

 

――どこか1カ国で目立った存在になれば、そういう人たちが探してアクセスしてきてくれる可能性が高くなるということですか?

 

そうです!フィリピンの最初のマスターフランチャイジーは、まさにそういう感じでしたね。かなりの大金持ちのようでしたけど、ビジネスをしたいので教育系のリサーチをしていて、いいなと思っているものを買い漁るというタイプでした。

 

国際的なフランチャイズ展開により、インターナショナルコンペティションが可能になる

――サカモトセミナーの特徴の1つとして、インターナショナルコンペティションがあると思います。民間の塾で、インターナショナルコンペティションをやっているところなんて聞いたことがありません。海外にフランチャイズ展開しているサカモトセミナーだからこそできることだと思います。これは、どのような効果をあげていますか?

 

毎年World Mathematics Competitionを開催させていただいておりますが、国予選を勝ち抜いて最終大会へ来た生徒は、算数の楽しさ、醍醐味に気付いているんです。

 

算数、さらに数学は、すべての理系の基礎です。論理的に考える楽しさを少しでも早くから知ってほしい、このような思いを抱いて、インターナショナルコンペティションを開催しております。

 

また各マスターFCとも、自分の国からチャンピオンがでるようにと、必死に教育することも各国々のレベルをあげる一因になっていると思います。

 

――算数の楽しさ、醍醐味を味わえるようになるための動機づけにインターナショナルコンペティションが役立っているんですね。

 

はい。よく誤解されているのは、「小学生の算数とは計算のことだ。」と思われているようなんですが、実際はそうではないんです。中学生の数学では方程式を習いますので、公式を使って解けばよいのですが、小学生は方程式を知りませんから、自分でロジックを組んで問題を解かなければなりません。計算は自分が立てた方針で解き進める途中で数値を求めるときに必要となる一作業であり、決して計算=算数ではないのです。この方程式や公式なしに問題を解く楽しさが算数なんですが、それがなかなか理解されていないのです。

 

――サカモトメソッドは、算数の楽しさ、醍醐味を味わいやすいものになっているんですね。

 

はい。日本で指導しているときもそうだったんですけど、塾に来る子に「今日は何の問題をやりたい?」と聞くと、「算数の国語の問題をやりたい」という子が出てくるんですよ。つまり文章題のことです。いろんな問題があって、それが解けたというのがおもしろいんですね。クイズを解くように算数の問題が解けると。その辺で、算数が好きになるというのが一番ですよね。

 

――僕が教えている「田原の物理」も、表面的に違っている問題を1つの解法体系で解いていくんです。表面的に違っていても、同じやり方で全部解けるということを経験すると、一段、抽象度が高い思考をすることができるようになるんです。 サカモトメソッドの3段論法とその点で共通点がありますね。理系科目の基本的な考え方だと思います。

 

なるほど。サカモトメソッドで学んでいくと、論理的思考が身に付いてくるんです。途中で伸びない子は、問題を読んだ瞬間に「分かった!」と言って、ぱーっと式や答を書き出す子というのなんです。これは、ある程度のところまで行くと止まってしまうんです。我々は、解けそうな問題であっても論理的に三段論法で解き進めていくということをやるんです。このトレーニングを繰り返していますから、違う問題を見ても論理的に考え始めてしまうんです。この辺が強くなっていくところだと思うんです。

インドネシアの算数教育を変えた

 

――インドネシアでの成功について教えてください。

 

現在サカモトのグループで一番成功しているのはインドネシアですが、最初の数年はパッとしませんでした。何が理由なのかよくわからず、現場の先生の声を聞いたのですが、皆さん解法も教材も素晴らしいと言われて、マーケティングに何らかの原因があるのではないかと思っていました。

 

そんな中で、セールスポイントを、超シンプルにしてみようと思いました。

 

「日本のプロダクト」この1点を強調することにしました。日本ブランドは信頼されていますからね。

 

また同業者が新聞広告を出した翌日に、必ずサカモトの広告を出しました。追いかけますよという意思表示です。

 

さらにマスターフランチャイジーが、サカモトのビジネスをするだけの4階建ての本部ビルを買い、見込みフランチャイジーが来社されたときに、このビジネスへの本気度を示しました。

 

そのころから急激に伸び始めましたね。

 

――はじめての国で教育ビジネスをやるときには、その国に合わせていく必要があると思いますが、どのように考えていくのですか?

 

それは、2つのラインで考えています。

 

まずは、どこの国でも、学校の勉強の役に立つかというのが基本のベースとしてあります。発展途上国に行くと一クラスの人数も多いので、ついていける子といけない子というのが必ずいるんですよね。

 

ついて来れない子のほうが絶対数が多いわけですから、まず最初に、その子たちを改善するためにはどうしたらいいかという発想をします。

 

それが1つ目のラインで、教育の仕方の部分ですね。

 

それとは別に、いかに売るかという2つ目のラインがあります。

 

どういう風に教育するかというのは、最初からほぼ間違っていないんです。フランチャイジーをする人も教育関係者ですから、教育事情を良く知っているわけです。

 

いかに売るかというところになると、国によって事情がいろいろ違うんです。

 

――インドネシアでは、日本ブランドを前面に出したらうまくいったんですね。

 

そうですね。売り方の部分は、国や状況によってだいぶ変わってきます。

 

シンガポールだと、他よりもクオリティが高いということを前に出して、パワフルで、ロジカルで、かつ、イージーな小学生用の文章題のメソッドというのを焦点においたんですが、インドネシアだと、文章題うんぬんよりも、学校の勉強が良くなったらいいだけなんだから、もっと分かりやすい方法で「これはいい」ということを強調したほうがよいと思いました。

 

それで、日本のプロダクトだということを前に出すということでやりだしたんです。

 

今度は、ビジネスをする上で、いろんなブランドが海外から来るけれど、実際に良いのかどうか、長続きがするのかどうかということを、ビジネスをする人は必ず見るわけです。それで、自社ビル4階建てを購入して、1-4階まですべてサカモトですよというようにしました。それだけビルをもっているわけですから、当然スタッフも必要なわけですよね。そのビルでプレゼンテーションをやると、本社ビルがあるなら大丈夫だということで安心してサインしてフランチャイジーになっていくわけです。

 

――4階建ての自社ビルへの投資が実を結んだのですね。それは、マスターフランチャイジーが投資したんですか?

 

そうなんです。そのオーナーは、サカモト以外にも教育ビジネスを持っているんですね。マーケティングの方法とかを彼自身がアメリカで勉強してきて、それを実践しているわけなんです。自分自身に対して高い目標を置いて負荷をかけて、できると思ったらやるし、できないと思ったらこちらに交渉してきます。本当にビジネスライクな人間なんです。

 

――サカモトセミナーがターゲットとしている層はどこなのですか?

 

中流所得層ですね。向こうにしては学費が少し高めに設定されていますね。でも、学校に行くと40-50人のクラスで先生が何言っているかわからなくて、ついていけない子どもでも、定員6名のクラス、新人の先生なら4名のクラスできめ細やかにやれば、正直言ってほとんどの子が改善されますよ。少々高くても、それに見合った授業料を払っているなと思えば満足していただけますね。

 

インドネシアのサカモトセミナーのえらいところは、1年間終わると、いいホテル借りて修了式をやるんですよ。6年間終わると卒業式をするんですよ。これは、所属意識が高まるんですね。6年間通うとローブを着ながら卒業証書をもらえて、一人一人にトロフィーを授与していくんですよ。それを目標に6年間通うということで、子どものモチベーションが上がります。こんなことをやっている民間の塾なんてインドネシアにはないんですね。それで、親としても通わしてやりたいという気持ちが出てきます。

 

シンガポールでそれをやろうかといったら、シンガポーリアンからは、「むだや!」と反対されました(笑)。そんなもん、何にもならんと言われました(笑)。

 

――インドネシアでのサカモトセミナーのシェアが、あの「有名大手塾」よりも上だというのを知って驚いたんですけど、どこに原因があると思いますか?

 

我々が行くまでは、算数と計算というのは強力な結びつきで、計算さえやっていれば学校の成績はよくなるという固定観念があったようです。

 

でも、学力のレベルが上がってくると、単純な計算をくりかえしていていいのかという認識が親の中に生まれてきます。サカモトセンターの数がどぉーーーっと増えて、街のそこかしこにサカモトの看板が上がるようになって、親の認識が変わってきました。

 

その「有名大手塾」では、大きな1つの教室に1年生も4年生も同じ教室に座っていて自学自習をしているんですけど、退屈する子もいるわけです。サカモトの場合は、6人しかいないし、先生がこまめに声をかけるし、問題のパターンもいろいろ違ってくるとなると面白くなってきますね。

 

しかも1冊を解き終わるとインドネシアの教材の場合は、最後にマンガがついているんですよ。1冊終わればマンガが読めて、このマンガの続きを読みたかったら次の1冊をやらなければならないんです。(笑) いろんな工夫をしているんです。子どもが継続できるというのが魅力ですね。

 

――インドネシアの算数教育に対する親の意識をサカモトセミナーが変えたということですよね。

 

そうですね。しかも、コンペティションをするというのは、まず、民間の会社ではありませんから。コンペティションに出る問題を見たら親は気づくんです。こんな難しい問題をやるのかって。当然、見たこともない問題なわけです。

 

数学オリンピックというのもありますが、それを目指すのは、本当に自分が賢いと思っている子なんですね。我々のコンペティションの場合は、国予選を開くんです。インドネシアの場合は、地方予選もあります。地方予選である程度いい成績が取れるということが自信につながっていきます。

 

これを繰り返していったら、最後の本選に出れるんじゃないかという期待感にもつながっていくんですね。最初はこんな問題出来なかったけれど、次の年はもっとできるようになったということになれば、動機づけになりますよね。

海外で教育ビジネスをやりたい人へ

 

――はじめての国で教育ビジネスが成功する秘訣は何ですか?

 

その国に住んだことのない日本人が細かなことを言っても意味がありません。現地のマスターフランチャイジーの考え方、方針を尊重し、思うがままにやってみる。だめだったならば変えればいい。
精いっぱいやったが結果が出せなかった方は、向こうからお辞めになります。
このように相手に頼る部分が大きいですので、最初の人物評価は慎重にします。

 

――人物評価をするときには、どのようなことに着目しているのですか?

 

最初は、来る者は拒まずということでやっていたんですけど、それだと失敗するということに気づきました。それで、どんなプランを持っているか計画書を出してもらって検討させてもらうことにして、プランを改良したらうまくいくのではないかとか、どれだけ真剣に考えているのか、どれだけ資金を持っているのかというところをみんなで見て、一緒にやるかどうかを選択するようになりました。

 

さらに、国の状況を把握しているかどうかが大事ですね。その国に持ち込んだら、ちょっと手を加えたほうがいいというのを、我々は知識がありませんが、現地の人なら何かアイディアを持っているだろうということで、それを元にちょっと変えてみましょうかということを提案したりしています。

 

――海外で教育ビジネスを始めたい人、または、すでに海外で塾などをやっている人がサカモトセミナーのフランチャイズになるためにはどうしたらよいのですか?

 

まずは、シンガポールの塾に来てもらって、見学していただきます。それで、計画書を提出してもらって相談することになります。

 

フランチャイズの塾の中には、それだけをやらなければならないという縛りがあるところもあるのですが、サカモトの場合には、既存の塾で英語を教えても構わないし、中国語を教えても構いません。普通の塾をやっているのであれば構いませんというように、かなりフレキシブルにやっているんです。フランチャイジーにとっては、算数をサカモトでやっているということで生徒が来るので、その生徒に自分でやっている理科の科目をすすめることは簡単なんですよね。

 

――サカモトというブランドで、最初から他の塾と差別化できるので、塾などを始めようと思っている人にはメリットがありそうですね。

 

マーケットに算数に関するプログラムというのがあるんです。でも、ほとんどは計算なんです。文章題を前面に出して文章題のノウハウを持っているというプログラムはほとんどないんです。計算のプログラムなんですけど、それだけじゃ生徒が来ないから文章題が強くなりますよとキャッチコピーを出しているところはありますが、実際にどんなメソッドを持っているかというと、特に目新しいものはないんです。

 

我々は、文章題を解ける強力なメソッドがあるというのが1点。
フランチャイジーをやれるのはあなたの地区ではあなただけですというのが2点。

 

この2つが、他と差別化できるポイントだと思います。

 

――サカモトセミナーは、今後、どのように展開していきたいのですか?

 

毎年、一歩ずつサカモト式を教える国を増やしていきたいと思います。

 

今年は西オーストラリア州のパースへ拠点を一つ作りました。

 

近い将来、スリランカ、ミャンマー、中東のUAE、さらにはインドなどへ普及させたいと思っています。

 

また、小学生だけでなく、中学生の数学、幼稚園児の能力開発の分野へも順を追って展開していきたいと思っております。

海外で働きたい若者へのアドバイス

 

――子どものころから海外で働くことに憧れをお持ちだったということですが、実際に海外で働くという夢をかなえられた今、振り返ってみてどのように感じていますか? 目標に向かって進んできたという感じでしょうか?

 

そんなかっこいいもんじゃありませんよ。

 

大企業の方針で行けば、そういうやり方は当然だと思うんですよ。でも、日本で教材を作ってシンガポールに持ち込んでみたら、「わー、もっと手を加えないといかん」とすぐに気がつくわけです。

 

そういうことがいろいろあって、現地の状況にフレキシブルに合わせて、常に対応していかなければいけない。それを、本当にサラリーマン風に就労時間8時間の枠でやっていたら、とてもできるわけないんですね。

 

とにかくがむしゃらに、目の前の問題を1つ1つ処理していって、これを繰り返して、あるときにひょーーーんといい話が来たりするんです。その繰り返しですね。

 

――計画が実現していくというよりも、予想していなかった話が、向こうから来るって感じなんですか?

 

そうですね。こちらから仕掛けるより、向こうからやってきますね。

 

――そういう経験を繰り返すと、このままやっていると、何かが来るぞという予感があるんですか。

 

あります。しかも、今は、メールが発達していますから、毎月、いろんな国から問い合わせが来ますよ。メールがあるおかげで、会わずして冷やかしか、本気かというのもある程度、選別できるようになりましたね。

 

――海外で仕事をしていて気がついたこと、若林さんが海外で働くうえで大事にしている考えなどを教えてください。

 

1つは、日本にいたときに気がつかなかったんですけど、サカモトの商品力ですね。これと同じようなものはなくて差別化できるから、かなり強いものがある。でも、売り方は国や状況によって変えなくちゃいけないから、簡単にあきらめちゃいけないんです。インドネシアのときのように、最初はパッとしないけども、何かがあって急にパーンと上がることはあるんですよ。逆に、これはいいなと思ってもすっからかんになることもありますね。根気強くやるということですね。

 

あとは、とにかく柔軟性ですね。日本人というのは、小学校教育から1つの線路に乗ってまっすぐ向くようにという教育をされ続けていますから、案外、優柔不断というのが受け入れられないというか、そういう体質があるんです。こっち来たら、そんなことを言っていられないんです。状況によって、「うん。それも、片目つむってやってみよう。」ということでやったりして、それが結果的によくなったりするわけなんです。

 

柔軟に対応していくというのは、かなり強く学びましたね。確かに目標は必要ですよ。でも、計画したとおりにやれるわけはない。やろうと思っても、それは、ある程度のところまでで、そこから先は難しい。ものごとは、柔軟に対応していくと、いい運がポッと入ってくるんです。

 

最近契約したオーストラリアもそうなんです。これまでは、オーストラリア人からの問い合わせばかりだったんです。でも、この間来た彼はシンガポール人だったんですね。向こうに移住して国籍を取った人だったんです。私はシンガポール人を良く知っていますから、このパターンはやれるなと思いました。彼は、オーストラリア人ではなく、向こうに住んでいるアジア系をターゲットにすると考えていて、オーストラリアのカリキュラムに合わせるとゆっくりやらなければならないので、教育熱心なアジア系の親はもっとどんどん勉強をやらせたがっている。日本が発祥で、シンガポールでもまれたプログラムが入ってくるのだったら間違いないだろうということで、伸びる可能性を大いに感じましたね。そのマーケットだけでも十分じゃないかと思いました。

 

――若林さんも日本の教育システムで育ってきたと思いますが、若林さんとお話していると、オープンマインドだし、とても思考が柔軟だと感じます。どのようにしてマインドセットが変わったのですか?

 

最初の頃は、私もまっすぐ前しか見ていなかったんです。気がついたら、完全に一人ぼっちで孤立しているんですね。シンガポール人ともなじめなくて、妙に自分一人で壁を作ってしまっていましたね。この方針がなぜわからんのかというような居丈高な感じでしたよ。それじゃ何も進歩しません。何も前へ進まないんです。それに気がついたときから、こっちにいるんだったら、こっちの考え方に合わせなくっちゃいけないんじゃないかと思いました。自分から折れていって、自分を変えていったところから変わり始めましたね。

 

――日本人のマインドセットを手放して18年たった若林さんから見て、日本人はどのように見えますか?

 

こっちに住んでいる日本人は、すごい奴と呼べる人がいっぱいいるんですよね。日本を離れて来るんですから、ガッツがある人が多いんです。言い方悪いですけど、普通ではない人が多いですよね。特に自営業で来ている人は、全く違いますね。日本企業からこちらに駐在で来られる方の中でも、責任あるポジションについている人は、話をしているとやっぱり柔軟ですよ。なぜ柔軟になるかというと、こっちで仕事をやりやすくしていくためには、使っている部下もみんなシンガポール人ですから、彼らのやり方を見て、フレキシブルにやっているから、うまいこといっているんですよ。

 

日本に住んでいたら、私も日本に合わせると思うんです。私が、日本でこんな感じでやっていたら、信用ならん奴だと思われるかもしれませんね(笑)。

 

――最後に、海外で教育ビジネスをしたいと考えている方に向けて一言お願いします。

 

塾というのは比較的起業しやすい分野だと思います。店を開くと言っても改装に多額のコストがかかるわけではありません。机といす、ホワイトボード、エアコン、パテーションで部屋を区切り、そして看板をあげれば、基本的にはスタートできます。

 

しかし、数年内に閉鎖する塾は多数あります。他の塾との差別化が難しいからです。授業料が極端に安いとか、超有名な先生が教えているなどを売りにすればよいのでしょうが、その方針で経営をしていくのであれば、多数の生徒が最初から必要、あるいは高額の報酬を有名な先生にお支払しなければなりません。

 

幸い弊社が差別化できたのは、その独特の解法にあります。Powerful, Logical & Easyアプローチ、たった一つの方法で殆どのタイプの文章題が解けるというどこにも見当たらないユニークさ。PSLEの算数では、A*とAをとる生徒が毎年8割前後を占めるという実績。

 

18年前、私がサカモトをシンガポールで始めたときは、サカモトの生徒はゼロでした。しかし今はフランチャイズ展開をしており、フルラインナップのオリジナル教材が使用でき、サカモト式が教えられる先生のトレーニング制度もできています。サカモトという名前を聞いたことがあるというレベルにまでブランドも認知されています。

 

教育は社会を変えます。ぜひあなたも一度、教育産業へ飛び込んでみてください。

インタビューを終えて感じたこと

若林さんにお話をうかがって、どうして海外で成功することができたのかが少し分かった。

 

理由の1つは、日本市場で育まれたサカモトメソッドのオリジナリティだ。

 

海外の小学生向けの教育プログラムを見渡すと、「計算」や「記憶力」などのプログラムはたくさん存在する。しかし、「文章題」を通して、論理的な思考力を養うというプログラムは存在しない。なぜかというと、サカモトメソッドは、難関中学受験という小学生が文章題の難問を解くことを競う日本独自の環境の中で進化してきたものだからだ。ガラパゴス化した市場が、オリジナル性の高い教育プログラムを産み出したのだ。日本市場の特殊性は、強みにもなり得るのだ。

 

また、インターナショナルコンペティションの実施を可能にしているのは、文章題なら、いくらでも難しい問題を作れるということだ。日本の難関中学の受験産業には、難問のパターンが蓄積されていて、それらを組み合わせれば、いくらでも文章題の難問を作り出すことができる。ここでも、日本市場の特殊性が競争力として生かされているのだ。

 

もう一つの理由は、若林さんの柔軟に試行錯誤する力だ。

 

文化の違う外国で商品をどのようにアピールしたらよいのかは、考えて分かるものではない。自分の考え自体が、自分が育ってきた文化によって制限されているからだ。正解は多くの場合、自分の考えの外側にあるのだ。だから、自分の考えに固執すると正解にたどり着けなくなる。

 

若林さんが、何度も口に出していたのは、「柔軟性」という言葉だった。若林さんは、自分の中に正解がないことを自覚して、他人の言葉に耳を傾け、とりあえずやってみる。試行錯誤の中から見えてきたものを手掛かりにして、さらにやってみる。その繰り返しの中で、自分の外側に会った正解にたどり着くことができたのではないだろうか。

 

ゴールまでの道筋が見えていなくても、そのときそのときで柔軟性を発揮してがむしゃらに進んでいけば、自分には見えていない正解にたどり着くことができる。そして、それは、多くの場合、向こうからやってくるというお話は、重要な示唆を含んでいる。

 

どのようなニーズがあるのかについて知識が乏しいときは、あらゆる可能性を探りながら枝を伸ばしていくしかないのではないか。そうすると、それが、次第に多くの人に知られるようになり、価値を感じた人からのフィードバックが返ってくるようになる。そのときにはじめて、自分の商品の市場における価値に気づくことができるのだ。これは、他者を鏡にして自分自身のことを知るプロセスにも似ているかもしれない。

 

しかし、正解主義の中で育つと、不確定な状況の中で枝を伸ばしていくことができなくなる。枝を伸ばしたら、その労力に見合ったメリットを得られるということが保証されないと枝を伸ばせないのだ。しかし、どんなメリットがあるのかは誰にもわからない。唯一分かっていることは、

 

枝を伸ばさなければ、何も起こらない。

 

ということだけだ。

 

若林さんは、経験を通して「枝を伸ばしていけば、誰かがそれを発見し、何かが起こる」ということを確信していて、柔軟に次々と枝を伸ばしていく。インターネットの発達により、その枝は、以前よりもはるかに誰かに発見されやすくなり、若林さんの動きはスピードを増している。

 

21世紀は変化の激しい時代だと言われている。グローバル化の波は、ガラパゴス化していた日本市場にも次々にやってくるだろう。そのときに大事になるのは、答が見えない状況の中で柔軟に枝を伸ばしていくマインドセットではないだろうか。そのマインドセットがあれば、ガラパゴス化した日本で進化した独自のものを強みに変えていくことができるはずだ。

 

失敗を恐れずに、ワクワクして進もう。

自分には見えていない何かが、向こうからやってくることを信じて。

 

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  • ライター

田原真人

Facebookグループ「反転授業の研究」主宰。オンライン教育プロデューサー。

河合塾などで10年以上、予備校講師として物理を教えてきました。2005年に物理ネット予備校を立ち上げ、オンライン教育に関わるようになり、それ以来、動画講義やビデオ会議室を使って学習効果を上げる方法について独自に取り組んできました。

2012年に反転授業と出会い、反転授業やアクティブラーニングについての集合知を生み出すためのFacebookグループ「反転授業の研究」を立ち上げたところメンバー数が2年間で約3000名に増えました。

現在は、グループの主宰者として、ほぼ毎月、オンライン勉強会を開催したり、動画講義やアクティブラーニング、授業設計、ファシリテーションなどを学ぶオンラインワークショップの企画・運営をしています。
 
教育現場で学習者が主体的に学ぶのを促すためには、教師が主体的に学ぶ必要があると考え、教師だけでなく、教育に関心がある様々な属性の人たちが学び合える場をオンラインに作っています。
 
今、手応えを感じているのは、オンラインの交流によりメンタルモデルを作り変え、Growth Mindsetに切り替えていくようなダイナミックな学び。周りを巻き込んで主体的な動きを創り出すために、自らが主体的にチャレンジしていくことを心がけています。
 
21世紀型の学びのコンセプトを発信するために

「21世紀マインドセット」
http://phys-yobiko.com/mission/

を実施し、オンラインに学び合いの場を創っています。
 
また、今後は、国境を超えて交流しながら学ぶ、国際交流学習にも積極的に取り組んでいく予定です。

著書『微積分で楽しく高校物理がわかる本』、『日本一詳しい物理基礎・物理の解き方』、『これから物理を学びたい人のための科学史/数学』など10冊。
 
田原真人.com
http://masatotahara.com

「反転授業の研究」ブログ
http://flipped-class.net/wp

フィズヨビ
http://phys-yobiko.com

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