- 未来教育リポート
- 2015.03.02
日本だけが取り残される?母子留学が話題のマレーシア「21世紀型教育」とは何か
最近、”母子留学”という言葉を耳にすることはありませんか? 母子留学とは、子どもが海外の学校に通学するために、その学校のある国にママと一緒に移住する、というものです。そして、パパは国に残って、がんばって働いて稼ぐ。母子と父親が、子どもの通学のために離れて過ごす形態のことです。
そして、近年特に、日本でこの母子留学として話題になるのがマレーシアのインターナショナルスクールです。
昨年、育休を取って家族でアジアを放浪した筆者は、そうしたマレーシアの教育事情を探るべく、マレーシアで3都市、8校に実際に足を運び、その他多くの学校もチェックしてみました。また、母子留学している人からも話を聞いてみました。
さて、なぜマレーシアなのか?ということですが、同じアジアの中にあるという心理的、物理的近さ。物価の安さ、都市の発展具合、治安、気候、そして英語中心で行われる授業と、その教育内容の高さなどトータルバランスで考えると、マレーシアは母子留学の第一候補という人が多いのです。
また、2020年に先進国入りを目指すマレーシアは、教育を一つの重点政策にしており、世界中からインターナショナルスクールを誘致したり、国内の教育改革を積極的に行っているのです。
■マレーシアの学校全てが最高!…ではない
教育に力を入れているマレーシアですが、国内の人種、宗教、バックグランドは非常に多様です。当然、学校の先生、生徒ともに多国籍です。中華系、マレー系、インド系のマレーシア人に加え、欧米系や、オーストラリア、ニュージーランド、南米、アフリカ、中国からも多くの生徒が来ています。意外にも多いのが、韓国系。韓国の教育熱が高いことは、ご存知だと思いますが、母子留学が非常に多いのも特徴です。
余談ですが、韓国では英語ができないと企業に就職できないくらい、英語ができることが当たり前になっており、小さい頃から海外に出ることが増えているようです。実際、韓国のグローバル企業への入社条件には、非常に高い英語のスコアが求められます。
それから、世界的に見ると、”子どもの教育のために移住する”という考え方は、それほど特別なことではないようです。日本では話題になっている母子留学は、それでもまだまだ少数派ですが、韓国然り、他の国でも、子どものために仕事と住む場所を変えた、という家族にたくさん会いました。
さて、そうした人たちが集まるインターナショナルスクールですが、マレーシアの首都クアラルンプールに30校以上、超大規模都市開発が行われているジョホールバルにも10校ちかく、ペナンにも8校くらいあります。
非常に多くの学校が、すでに乱立している雰囲気すらありますが、施設から先生の質から、日本の大学を軽く超えるよう環境のところから、まあ、そうでもないものまでレベルの差はかなりあります。
そうした学校に何を求めれるのか、選ぶ側の選択基準がしっかりしている必要があると感じます。
■多様性が魅力の一つ
マレーシアでは歴史的影響で、インターと言っても、イギリス系(カリキュラム)の学校が多いのも特徴ですが、もともとの民族構成が多民族な上、宗教の違いも存在し、そこに海外からきている人が混ざるので、ダイバーシティという観点では、日本では考えられない環境です。
英語や中国語が習得できる、ということよりも、こうした多様性が大きな魅力の一つだと思います。
もちろん、こうした環境に小さなうちから身を置くことに対して、ネガティブな意見もあります。日本人としてのアイデンティティが育たない、というものです。
しかし、中には”自分は日本人だ”ということを多様性のある外にいたからこそ、はっきり意識するようになった、という声もありました。よく言われることですが、外にいることで、日本の良さを改めて認識できる、ということでしょうか。
■海外の教育に何を求めるのか?
それでは、こうした多様性のある環境に身を置き、マレーシア(海外)の教育に何を求めるのでしょうか?
シンガポールの教育フリーマガジン『Spring 』に工学院大学附属中学高等学校校長の平方邦行さんの言葉が載っていたので少し長いのですが引用してみます。
<現在の日本の教育は、「20世紀型の教育」が明治以来100年以上にわたり続いています。「20世紀型の教育」とは、一言で言うと「正解主義」を重んじた教育と言えるでしょう。正しい答えを求めることが最も重要で、途中のプロセスはあまり重視されませんでした。-(略)- 過去の知識や経験がそのまま社会で通用したので、それで十分だったのかもしれません。しかし、時代は変わりました。-(略)-過去の知識や経験だけで解決することは困難になっています。それにもかかわらず、20世紀型の教育という与えられた枠の中で考える傾向が、教育界には未だに根強く残っていると感じます。-(略)-
グローバル化が進んでいる今日、人と議論し対話をする中で自分の考えをしっかり表現できるようにならなければなりません。さまざまな民族や文化を受け入れ、問題を共有しながらアイディアを出し合って課題を解決することが必須なのです。
従来の教育に代わり、これからは「21世紀型の教育」が求められています。「21世紀型の教育」とは、一言で言うと未知の問題に直面したときに自ら考え解決する力を養う教育です。将来社会に出て活躍し必要とされる人間を育成する教育と言えるでしょう。>
個人的には海外の教育に求めることは、こういうことかなと思います。語学とか、多様性の問題は置いておいて。
また、藤原和博さん、宮台真司さんの共著『よのなかのルール』には、こうも書かれています。
<日本では先進国では唯一、成熟社会化に見合った教育制度の改革が行われていません。「いい学校・いい会社・いい人生」が信じられた時代の、都市型労働者を養成するための長期の苦役が、手つかずのまま放置されています。内容が空虚になったのに形だけ同じままなのです。>
このように、日本の教育は世界から見ると、かなり異質のものになってしまっているのではないか?という気がします。
いずれにせよ、結局、どこの学校に通っていようとも、自分自身で、考える力をどう身につけるのか?ということだな、と感じました。
ただ、マレーシアには、自分が通いたくなるような素晴らしい学校がいくつかありました。
マレーシアの母子留学、ブームになるのもわかる気がします。結局は、学校や教育に何を求めるのか?ということでしょうか。世界の潮流では、そこがシビアに求められつつあると感じました。
【参考】
※ 東洋経済ON LINE ベールを脱いだアジア最強のエリート養成校
※ シンガポール発海外教育情報サイト『Spring 』〜この人からのエール
※ 藤原和博 宮台真司 (2005) 人生の教科書『よのなかのルール』(筑摩書房)
【画像】
- ライター
- 2015.03.02
- 日本だけが取り残される?母子留学が話題のマレーシア「21世紀型教育」とは何か
- 2015.02.27
- 日本は教育もガラパゴス化?シンガポール幼児教育から見るグローバルシチズンへの道
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特に食や農、遊び、学びといった「人の真ん中」に携わる分野を得意としています。
2015年保育士免許取得(予定!)2児の父。
2014年、次男誕生に際して1年間の育児休暇を取得。
育休中は、家族でアジア放浪を行う。
日本の現状の教育に強い危機感を持っており、長男をシンガポールの幼稚園に2か月間通園させる。
小学館「WooRis」「Biz Lady」など複数のWebマガジンのライター。
子育てブログ「おとなになったらよんでほしい」
http://otoyon.com/