PREV
NEXT
  • 実行委員会の活動
  • 2018.01.25

「人一生の育ち」を考える教育×経済対話 第一回「21世紀の幼少期の育ちと可能性」

東京大学大学院教育学研究科教授・秋田喜代美氏 × 株式会社LIFULL代表取締役社長・井上高志氏

未来教育会議では、「個人」と「組織」と「社会」が同時に幸せになるための、21世紀の「人一生の育ち」を描くと言う目的で、「人一生の育ちプロジェクト」をスタートさせ、様々な専門家や実践家との議論をシリーズで行うこととなった。

第1回は「21世紀の幼少期の育ちと可能性」がテーマ。

『三つ子の魂百まで』ということわざもあるように、幼少期に子どもを取り巻く環境は人の育ちにとって重要だと考えられている。果たしてどの程度の重要性があるのか。研究と実践の両面から幼少期の重要性について迫った。

行動主体である主体性の感覚を育む、最も重要な時期

まずお話を伺ったのは、教育や保育の質を向上すべく研究者として本テーマに取り組む、東京大学教育学研究科の秋田喜代美氏。研究の傍ら、発達保育実践政策学センターのセンター長として全国の保育園・幼稚園に足を運んでいる。

 

その秋田氏から、我々は、「行動主体である主体性の感覚」という言葉を学ぶ。

秋田氏が、先日訪れたという静岡市の幼稚園の公開保育。園庭で、子どもたちが思い思いの方法で遊んでいた。ある子が、3つの大きなシャベルの片方を1点ひもでくくり、三脚のような形に立てて何か空間を作っている。一見何をつくりたいのかはわからないが、ひもの結び方などを何度も試行錯誤している。聞いて見ると、ひもの結び方は誰に教わったわけでもなく、自分で編み出したようだ。

 

「幼児期の子どもたちにとっては、小学校以降のようにわかりやすい評価基準があるわけではないですよね。大人から見ると、一体何をしているのかわからないことも多い。ですが、子どもたちはトライアンドエラーを繰り返したり、対人的なことがらを学びながら、この時期に日々多くのことを学んでいることがわかります。こうして、自分が行動の主体である、という意識を養っているのでしょう。」

 

幼児期の研究によると、3-5歳において「自分が行動主体であるという主体性の感覚」が、さまざまな領域を超えて生涯にわたるその後の成果につながるという。そしてそれは、認知的能力とは独立しているとのことだ。

「他者との関係性」と 「感性」を培うピークもこの時期

データにも幼児期の重要性は現れている。ある研究によれば、人の成長過程のうち脳の敏感な時期というものがあり、項目により1歳から3歳までに感度のピークがくるものが多いという。

 

「例えば『仲間同士の対人スキル』を身につけるための脳の感度は、3歳くらいがピークです。その後徐々に落ちていくと言われています。対人スキルはこれから共同的な社会をつくる一員としては非常に大事な能力ですよね。幼児期はこうした社会の成員となるための基本的な能力を培っている期間なのです。」

 

この時期は感性を養う上でも重要な時期だ、と秋田氏は語る。

 

「例えば、秋に色づいた木々の葉から色を取り出してみたり、いちょうの葉を組み合わせて新しい作品を作ったり。それを見て「きれいだね」と言う子がいます。こうしたところから、美しいと感じる感性を培っているわけですね。こうした感性は、乳幼児期に、暮らしを楽しむという経験を通して養っていくものです。ちなみに単純作業と比較しAIに代替されにくいと言われているのが、”創造性”が要求される仕事。これからの時代を生き抜くためにも、幼児期に感性を養うことは大切だと思います。」

 

また、幼児期に育まれた情動的な安定性は、その後大人になってからの心的健康や身体的健康にも影響を及ぼすと言われている。

 

「海外の研究では、幼児期の社会的スキルは、大人になってから家族を形成できるか、親になるかどうかというようなことの予測因子であったり、アルコール中毒などのリスク要因を低減するかどうかにも影響する、とも言われています。」

経済学、国家政策からみる幼児教育の高い投資効果

一方幼児期の環境の重要性は、経済学という切り口からも示唆されている。2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズヘックマンは、『幼児期のスキル形成はその後の人的資本形成の基礎をつくる。学びは更なる学びへとつながる。幼児期への投資は重要である』と語っている。(Heckman and Masterov. 2007.)

 

「ヘックマンの意見は賛否両論がありますが、質の高い幼児教育や保育は、人の潜在成長力を高める最も効率的な戦略だと言っています。その結果、将来的に子どもが成人した時点で税負担の能力が高まり、社会政策費用を抑えることにもつながる、という意見です。また別の研究では『幼児期に投資した額に対し、将来どの程度の返報があるか』という実験を行い、21歳では幼児期に投資した額の7倍、40歳では16倍の返報性があるという結果も出ています。」

 

保育の”質”を問うた研究では、就学前に受けた保育の質が低い、中程度、高い子の3段階に分け、小学校の数学がどの程度できるかという実験を行なった結果、質の高い保育を受けた子どもが最もできるという結果も出ている。

 

「集中して課題に取り組む、といった実行制御能力が保育の質によって高められる、ということですね。他にも、周りとうまく折り合いをつけるといった自己統制能力、他者への共感や思いやりを示す向社会的行動についても、幼児期の教育の質と関連があると言われています。」

 

こうした保育の質向上のために切り離せないのが、国を中心とした行政の存在。実は国により、乳児期、幼児期、義務教育のうちどの時期に投資をしているかは大きく異なるという。

 

「日本は(子ども・子育て支援新制度が始まる前のデータではあるものの、)財源配分は明らかに小学校からの義務教育段階が高いんです。それに対し、イギリスやニュージーランドは幼児期に、そしてフィンフランド、スウェーデンなどの北欧は、乳児期から投資しています。北欧は子どもの貧困率が低いと言われていますが、こうした早期からの教育が功を奏していると言えるのではないでしょうか。」

 

現在、こうした研究の多くが欧米で行われたものだという。秋田氏は発達保育実践政策学センターでの活動も通じ、日本での研究を進めていく予定だ。

東証一部上場企業社長の”OS”をつくった、母の存在

アカデミックな視点から幼児期の重要性を語った秋田氏。一方、自らの人生でその重要性を体現しているのが、株式会社LIFULLの創業者、井上高志氏だ。経営にあたって個々の能力を最大限活かす仕組み作りを行なってきたほか、社団法人21世紀学び研究所の設立にも携わるなど、教育への熱い関心も持つ。

 

「僕は教育の専門家でも何でもなく、あくまで実践者です。ですが経営に当たって、教育は切っても切り離せないと考えていますし、自社の枠組みを超えて教育というテーマ自体にも関心を持ってきました。教育に重要なものとは何かを考えるために、WHOやOECDの計画を読み漁った時期があったのですが、そこで思ったのが『人間のOSを作る』ということ。僕がOSと言っているのは”自尊心”と、セルフエスティーム、つまり”自己肯定感”です。後天的に学習していったところで、人間としてのOSがインストールされていないと機能しないのではないかと僕は考えているんです。これをなるべく早い段階から子どもにインストールすることが大事ではないかと思っています。」

 

自尊心、自己肯定感。こうしたものをインストールできる最も身近な存在は、親ではないか。そう井上氏は語る。

 

「教育をアウトソーシングする場面はいろいろあると思います。でもやはり、最も愛情をもって、子供の未来を信じていける存在なのは親。親がOSを作る役割をしっかり担うことが大切なのではないでしょうか。」

 

井上氏は、どんな環境で育ってきたのだろうか。26歳のときに起業し、今や設立20年。東証一部上場で時価総額1000億円ほどの大企業を創業した井上氏だが、起業家としての意識が芽生え始めたのは社会人になってから。それまでの井上氏は、今の姿を想像できないほど引っ込み思案の子どもだったという。

 

「僕は3人兄弟の末っ子で、学年でいちばん小さかったので、今思うと自尊心が育まれにくい状況だったと思います。大学卒業するまで本当にぐうたらで、周りが就活するのを見て『やばい、そろそろ就活だ』と思うような。社会のことも全然わかっていない、どこにでもいる学生でした。でも母からはずっと『あんたは大器晩成よ、すごいことになるわよ』と言われていたんです。今思うと、主体性を育むために母親が口癖で洗脳してくれていたんですよね。母は教育に関することなど、全く学んだこともないそうですが。」

 

お母様は井上氏を他人と比較することもなく、勉強しなさいと言ったことも一度もないという。

 

「兄は優秀だったんですが、親からは全く比べられなかったですね。そして、母は『世界中の人が敵になっても、私は味方』という”安心”を与えてくれました。いつも何かと、大げさに褒められてもいましたね。こうしてOSが備わっていったと思っています。いつ花開くかはわからないけれど、何かをきっかけにはまることもある。僕の場合は20代半ばに『このままじゃだめだ』と思ったタイミングがあって、社会貢献につながるような事業をしたいと思うようになったんです。」

他の有名社会起業家の中にも、親からOSを授けられてきた人は多いという。

 

「『絶対肯定の子育て(日経BP社)』という本にもありますが、自己肯定感を持てるようになったのは親の影響が大きいという経営者は、結構います。ある意味、言われ続けることで”勘違い”して、やる気になった人たちなのかもしれないですね。そういう意味で、経営者になってから初めて母の偉大さに気づきました。」

”OS”を育てるための知能、備わったOSを活かす企業内の仕掛け

OSを育てるために必要なものとは何か。井上氏は、言語や論理といったIQのみをインテリジェンスとして捉える時代から、『マルチプルインテリジェンス』が求められる時代に変化しているのではないか、と指摘する。

 

「人って、幼少期までは褒められる機会も比較的多いですが、公教育に入るといわゆる主要四教科ができるような子以外はあまり褒められないじゃないですか。僕も得意なのは体育とか音楽だったので、褒められることがあまりなかったんですよ。でも人にはいろんな強みがあって、例えば空間認知能力や音楽的能力、休み時間にお笑いをやってクラスの人気者になるような対人関係力に優れた人、そして内省・内観していくインテリジェンスを持った人、自然や環境を考える力など、もっと多方面に渡って認められるべき力はあると思うんです。こうしたマルチプルインテリジェンスは、時代の流れからしても求められるようになっていると思います。」

自分が行動の主体である、という感覚。こうした力を組織でも最大限活かせるよう、井上氏は人事制度で内発的動機付けを行なったり、心理的安全性を感じられるような仕掛けを行なっている。

 

「弊社では『利他主義』という社是や、『より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る』、という経営理念を掲げているのですが、まず人の採用に当たってはこのビジョンに共感できる人しか採用していません。また入社後にも、個人のキャリアビジョンを定期的に聞いて、支援するという仕組みをとっています。それは結局、人が何かをするときって『どうしてもこういうことやりたい』という内発的な動機が大事だと思うからなんですね。それを徹底的に支援するということをやっています。各々『今度はこの部署でチャレンジをしたい』と口々に言うので、人事はどう組み合わせるかという至難の技なんですよ。半年に1回、1人1人丁寧に面談したり、動機付けしないといけないというのは、言ってしまえば結構面倒くさいんです。でもそうすることに意味があると思っています。

 

またうちの会社でよく言っているのが、成功した人を評価するだけでなく『何かに挑戦し、失敗した人』も挑戦したことを称賛するということ。こうすることで安心感を生み、チャレンジしやすい環境を作っているんです。先日も全社総会で、チャレンジしたけど事業としては赤字になってしまった、という事例をあえて積極的に伝えてもらった。他の社員はそのチャレンジに拍手を送り、どんなチャレンジだったか教えて欲しい、と口々に言い合うような文化ですね。」

 

幼児教育の大切さは、そのまま社会に出てからの学びにもつながるということだろう。LIFULL社が『日本一働きたい会社』として認知されていることにも象徴されている。

そんな企業を作り上げた井上氏は、大きな未来を見つめている。2045年のシンギュラリティ(技術的特異点)の話題に象徴されるような、科学技術・生命科学により激変する社会で、どのような価値を提供していくかを常に考えているという。社会デザインや規制改革、教育改革などの分野で法人を設立し、途上国支援にも積極的だ。

 

「僕個人としては、50年後に国家間の紛争がない、世界平和を本気で実現したいと思っています。ちょうど100歳のころですが、これからの時代は150歳から200歳くらいまで生きる時代になると思うんですね。その中で何ができるか、何を実現したいかを考えています。今もいろいろな活動をしていますが、理事を務めている一般社団法人Living Anywhereでは『自分らしくを、もっと自由に』というテーマで、人々が場所や仕事などのいろいろな制約から解き放たれる世界を作ろう、と孫泰蔵さんとの活動も行なっています。

 

幸福学専門の慶應義塾大学教授、前野隆司先生によると、幸せには『自分らしく』『やってみよう』『なんとかなるさ』『感謝』の4つの因子があり、これがあれば人は幸せになれるそうです。子どもを成功させたい、と思うとしたら少し違うかもしれませんが、子どもを幸せにしたいと思うならば、この4つの因子を意識して伝えていくことで、幸せになる力を持つことができる気がしますね。」

Q&A

– セルフエスティーム=自己肯定感の重要性

 

Q:井上社長のお母様は、井上社長に『セルフエスティーム』『マルチプルインテリジェンス』が育まれるように、自然と言動が向いていたように思いました。秋田先生は、専門家の視点から見てどう思われますか。

 

秋田:とても面白かったです。私の場合とは全然違うなと思いました。私の母は、すごく私のことを愛してくれていい母だなと今でも思っていますが、愛情の形がまた違ったなと感じています。母の『我が子によりよい教育を』という思いもあって、当時まだ珍しい小学校受験をしているんです。そのための塾に入れられたわけですが、今になってわかるのは、幼児期の記憶は消せないということ。何をするときもストップウォッチで時間を測られたり、友達と遊ぶときもリーダーシップを発揮しなければならなかったり。そうしたことが、何だか違和感として記憶に残っているんです。この経験は今の研究の原動力の1つにもなっているような気がしますが、保育の質を考え、1人1人の個性を見抜いて、ゆっくりのびのび育っていける環境を作ることは、子どもにとって大事なのではないかと思っています。

 

– 親、周囲の大人の育ちの重要性

 

Q:幼児期の子どもの育ちには、親の育ちも必要があると思っています。さらには、保育士や教師、地域といった周りの人も含めて育っていくことが大事、という視点もあると思います。秋田先生は、大人たちがどういう風に育ちを支援していくのがよいとお考えでしょうか。

 

秋田:最近では、例えば日本共同システムさんとCEDEPが協働してみずほ銀行さんで「働く親のための子育て『親塾』」というものを開催しました。会社で働きながら、どんな親、組織人になりたいのかを考えられる機会はあまりないと思うのですが、仕事の後子どもを預けながら、帰る前に1時間くらい話をする。そうすると、ネットワークができて心の支えになると思います。特に男性が子育てのことを話す場があまりないという話もしていたので、ここで新しい学びが生まれるような気がします。

 

親、保育士、教師と、役割ごとに何をやるかも大事だとは思うんです。でもそれ以上に1人1人が親であり、市民であり、と言う考え方もできると思います。我が子だけでなく、地域貢献していきたいなという方も増えてきていますよね。地域に貢献したいなという人が増えるような仕組みをどうやったら作れるか、考えています。

 

井上:僕はビジネスの経営の人間なので、レバレッジポイントを探して動きます。全てのことは出来ないので、親に働きかけることをやろうとしています。

 

– 人の育ちを支援する上で”手間”をかける重要性

 

Q:井上社長が作り上げた内発的動機を引き出す社内の制度についてですが、人事の方々がわざわざ社員と1対1で話すのって面倒なんです、とおっしゃっていましたよね。面倒でも実践すること、これが大事なのだと感じましたが、井上社長はここにどんな想いをお持ちなのでしょうか。

 

井上:あなたが仕事を通じて成長していくためのお手伝いをしたい。そんな風に内発的動機をサポートする仕組みは、自己肯定感につながると思っています。弊社では、3年から5年先にどうなりたいか、なりたい姿を半年ごとに描いてもらいます。そして上司や人事部門がそれを実現するためのサポートを行います。15年前、教育の定義について考えたときに、教え込むことが教育なのではなく、支援サポートすることが教育なのだと思ったんです。それを今、実践の場に取り入れています。

 

– 人一生の育ちを考える上で最も大切なこととは

最後に、人一生の育ちを考える上最も大切だと思うことは何でしょうか。

 

井上:子どもたちにOSを育むことと、親にどう育てたらいいのかを教えることだと思います。これからAIが人間の全能力を超えるとされるシンギュラリティだったり、寿命が200-300年時代になったりと言われていて、世の中がどう変化するかはわかりませんが、人の育ちの根本的な重要性は変わらないのではないかと思います。

 

秋田:私は”出会い”だと思っています。自分の思いの枠を出て、何かに出会ってい続けること。他人と関わる時に、心が開かれていることが大事なのではないでしょうか。あとは、何といっても人間は生き物ですので、体の感覚にセンシティブになること。生涯衣食住をきちんとして、well-beingを保つ上で大事ではないかと思っています。

未来教育会議の所感

 

発達段階初期におけるトピックで、アカデミアの専門家と人の育ちを大切にしておられる経営者から聞いた。

秋田先生のお話にあった、「自分が行動主体であるという主体性の感覚」という言葉は、非常に大きなキーワードだと思える。これは、井上社長の話にも出てきている自己肯定感(セルフエスティーム)とそのまま繋がる。

発達段階初期の時期は、この主体性の感覚を十分に培うことこそが何をおいても重要であり、それは、その人のその後の人生において花や実を創るための「根」となるものであろう。

面白いのは、この主体性の感覚は、学習の習熟度のような認知的能力とは独立した存在であるということ。つまり、この時期には「根」としての主体性の感覚を培い、その後に実や花につながる能力を築いていくことが出来るし、そうすることの方が、その後の人生においてはより大切だと理解することが出来る。井上社長のお母様の育て方と井上社長の活躍はこのことを絵に描いたように私たちに示してくれているように思う。

どのように、この主体性の感覚を培うのかは、様々な考え方があってもよいように思うが、森の幼稚園やピースフルスクールなど国内外の教育現場を見てきた実感から語るとすると、子どもたちが「自分自身が何を感じているのかを自分で感じることと、それを表現できること」が重要になるといえそうだ。(東洋経済オンライン「未来の学び方・働き方はどう変わる?」)

 

井上社長のお話に、人には自分の得意な領域があるという「マルチプルインテリジェンス」のお話が出てきた。その子どもの才能や発達程度に寄り添ったパーソナライズされた学びが大切であるということも一斉学習からチェンジをしていくこれからの教育のテーマである。
一つ留意しておきたいことは、発達段階初期は人の育ちにおいて極めて重要であるのだが、と同時に、大人になってからは成長はないのかというとそうではない。成人発達理論に関しては、このプロジェクトのどこかでより詳しく扱うことになろう。

 

井上社長が話して頂いた内的動機を引き出す社内のキャリアステップに関する制度のお話は、デンマークの教育の就学のシステムを彷彿とさせた。デンマークでは、早く社会に出るのかアカデミックに研究を深めていく大学に進むのかなどに関して、先生と実によく話し合いながら決定していくということを行ってどういう学校にいくのを決めている。学校に序列があって試験で決まっていくというのではなく、本当に自分のやりたいことや道をじっくりと考えて先生などの支援者とも話しながら納得して行くべき学校を決めていくシステムは、実に面倒なことであろうが、その後のキャリアについての動機づけはしっかりしたものとなっている。会社のキャリアシステムにこのような仕組みを企業であっても導入実施できることと、働きがいのある会社としての評価につながっていることにはしっかりと注目したい。

未来教育会議:兎洞武揚