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  • 未来教育リポート
  • 2015.02.09

ICT教育は、教科書をタブレットPCに置き換えることじゃない。学校の「仕組み」や「言葉」から創り変える『スティーブ・ジョブズ・スクール』に行ってみた

【未来教育会議オランダ・スタディツアー・リポートVol.1】

2014年、未来教育会議の法人パートナーと有志の個人のみなさんが、現在世界で起きているさまざまな教育の取り組みを知るべく、日本・オランダ・デンマークへのスタディツアーを行いました。【未来教育会議オランダ・スタディツアー・リポート】のシリーズでは、オランダで訪問した様々な現場のリポートを掲載していきたいと思います。

 

「スティーブ・ジョブズ・スクール」に行ってきました

スティーブ・ジョブズ・スクールという学校をご存知でしょうか。

 

オランダで2013年から開校している、最新のICT技術を取り入れて、
21世紀型の教育モデルを追求しようという実験的な小学校です。

 

この名前はもちろん米アップル社の創業者が由来ですが、
アップル社と直接関係があるわけではないとのこと。

 

オランダでは「レオナルド・ダ・ヴィンチ・スクール」のように
偉人の名前を学校名にすることがあるそうで、
そのノリでITの歴史に名を残す偉人の名前を冠したのだそう。

 

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「娘が、自分や自分の父親と同じような教育を受けるのはおかしい!」

図2

創設者の Maurice de Hord さん。

 

Maurice さんは、自分の娘さんが通うようになったときに

「いまの学校は、自分や自分のお父さんが通っていたのと同じじゃないか」
「2030年を目指した教育ではなく、1990年に戻る教育が行われている」
「未来に生きる子どもたちが、過去に戻った教育を受けなくてはならない。これはおかしい」

と感じ、そこから、
未来に向けて学習する人にとって最もよい学校を創ろう、と思い立ったのだそう。

 

2013年8月から運営が開始され、現在オランダ国内22校に広がっているとのこと。

「自分の学校もスティーブ・ジョブズ・スクールにしたい!」という学校や
「自分の地域にもスティーブ・ジョブズ・スクールを創りたい!」という保護者に、
Maurice さんのチームがノウハウやアプリケーションを提供しているのです。

スティーブ・ジョブズ・スクールの授業風景

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22校のそれぞれで多少違いがあるようですが、

 

基本的には、ほぼすべての学習が、iPadを活用したワークショップと
自学自習で行われています。1日の授業のうち3分の1程度が自習。

 

教材は「sCool Project」というアムステルダム大学が、
スティーブ・ジョブズ・スクールのために開発したプログラムを使用。

4歳から12歳の子どもが学ばなければならない内容を網羅しているそう。

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写真は「sCool Project」の中にある、「計算の庭」というソフト。

他にも、世の中にある様々なアプリも活用しているとのことです。

 

図5

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上の写真は授業間の教室移動シーン。

 

スティーブ・ジョブズ・スクールの最大の特徴は、
異年齢混交・習熟度別のワークショップが授業の基本になっていること。

 

学年別のクラスはあるけれど、日本の一般的な小学校のように
同じ年齢の子どもたちがひとつの教室にずっと居て
同じ時間割をこなしていくという仕組みではありません。

 

朝のホームルームの後は、
皆ばらばらに、自分の学習のレベルに合わせて、
自分の受けたい授業を受けに行きます。大学のような感じですね。

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一日の授業のうち、1/3は自習時間。

「静かな広場」と称する自習スペースで各自の課題に取り組みます。

 

いつでも自分のレベルにあった学習ができるのが利点で
子ども達はゲーム感覚で楽しく学習しているようです。

ICTを活用し、学習内容や進度をモニタリング

図9

ひとりひとりの子どもの学習計画には、
「TicTic」と呼ばれるスケジュール管理用のアプリが使われています。
子ども用・保護者用・教員用があり、学校だけでなく、家庭学習も管理できます。

図10

教員用を見ると、どの子が、どの学習内容を、どれだけ学んでいるかがわかります。
ちなみに、これまでにとられているデータによると、スティーブ・ジョブズ・スクールの
子どもたちは、全国の平均の4倍の問題数を解いているのだとか。

 

こうした情報を使って、子どもと先生とで6週間に1度面談を行い、
学習計画をリフレクションし、次の学習計画を立てていきます。

 

面談を踏まえ、子どもたちは土日に保護者の力を借りながら
主体的に次週のスケジュールを組んでいくそうです。

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Maurice さんは、

「他の学校との大きな違いは、既存のシステムに
iPadを当てはめるのではなく、最初からiPadを使用することを前提に
プログラムが組み立てられていること」

と語ります。

 

「学校でICTを活用しよう!」というときに、

既存のカリキュラムやクラス編成は変えられない与件としてしまい
そこにデジタルデバイスをどうはめ込むかを考えるのではなく、

学校のそもそも、学ぶことのそもそもを発想し直して、
ICTでできること最大限に活かせるよう、
学校の仕組み自体を新たに創り上げてしまう。

 

そこが、スティーブ・ジョブズ・スクールに行ってみて、
いちばん驚き、いちばん素敵に感じたポイントでした。

 

学校が変われば、言葉も変わる

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(「歴史アトリエ」と書かれた教室。)

 

学校のそもそも、学ぶことのそもそもから
デザインし直すと、「言葉」も変わっていくようです。

 

先生は「コーチ」、授業は「ワークショップ」、
算数・国語・歴史・美術などの科目ごとに分かれている教室は、
教室は「アトリエ」 (算数アトリエ、国語アトリエ等)と呼ばれています。

同じ場所でも、教室じゃなくて「アトリエ」と呼ぶ。
呼び方ひとつなんですけど、なんだかワクワクする感じがしますね。

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2013年にスタートをきったばかりのスティーブ・ジョブズ・スクールですが

世界から注目を集めるプロジェクトとなり、多くの見学者が訪れています。

 

とかくテクノロジーやデバイスに目が行ってしまうのですが、

見学途中で出会った保護者の方が語ってくれた

「娘がこの学校に通うようになって、学校が休みの土曜日に『なぜ学校がないの。早く学校に行きたい』と言った。それくらい、学校が楽しみな場所になっている」

という言葉や

案内をしてくれた女の子の

「前の学校ではいじめられていたけれど、ここでは認めてもらえて楽しい。前の学校では何も学べなかったけど、ここでは自分のやりたいことを学べるので楽しい」

という言葉も、とても深く印象に残りました。

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写真は、休憩中ではなく授業中の風景。

 

ICTを活用するというのは、ただ教科書をタブレットPCに置き換えればいいことじゃない。

未来を生きる子どもたちにどんな力が必要かを考えて、

その力を身につけてもらうために、学校の「仕組み」や「言葉」から創り変えていくこと。

そこまでやってこそ、真にICTを活用したと言える。

そんなことを学んだスティーブ・ジョブズ・スクール訪問でした。