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  • 未来教育リポート
  • 2015.08.24

先生が21世紀スキルを楽しく体験的に学ぶ”キャンプ”、スタート!【Camp 21c for Teachers 1日目リポート】

8月10日(月)~ 8月12日(水)の2泊3日、山梨県にある保健農園ホテル・フフ山梨にて、未来教育会議の議論の中から生まれ、有志によるキャンプ21フォーティーチャーズ実行委員会が主催する、 「Camp 21c for Teachers ~先生が21世紀スキルを楽しく体験的に学ぶプログラム~」が開催されました。

 

参加者は、小学校・中学校・高校・大学の教員、会社員など21名。いずれも、教育に何らかの想いを抱くメンバーです。テーマは、「『知識つめこみ型の学び』から『創発型の学び』へ」。

 

この3日間、参加者たちはどんな志で集まり、どんな体験をし、どんな学びを得たのでしょうか。この記事では、4回にわたってプログラムのリポートをお届けします。

 

第1回目となる今回は、1日目の様子をご紹介します。

オープニング

まず、この3日間のグランドルールが共有されます。

 

・お互いの存在を尊重する

・耳を澄まし、場を五感で感じる

・からだの声を聴く

・そのときに心にあることを話す・聴く

・発見や意外な視点を楽しむ

 

次に、主催メンバーを代表して、株式会社教育と探求社の代表取締役社長であり、未来教育会議実行委員でもある、宮地勘司さんが、このプログラム開催の背景を説明しました。

 

宮地さん: 昨年の3月から、「日本の教育を“マルチステークホルダー”で良い方向へもって行こう」というコンセプトで、「未来教育会議」というプロジェクトを始めました。国内外22カ所でスタディツアーを行い、最先端の教育事例を勉強してきています。OST(オープン・スペース・テクノロジー)という手法により、「こんなことできそう! 一緒にやる人この指止まれ!」というかたちで立ち上がったのが今回のプログラムです。「先生方をもっと応援したい! 21世紀型の新しい学びを共につくっていきたい!」という発案から、手づくりで生まれました。

 

続いて、参加者一人ひとりが自己紹介。「名前・普段何をしているか・どうしてここに来たのか」などを話しました。

 

「現在は教員で、今後教員を続けるかどうか迷っている」「大学で教育学を学んでおり、教員をめざしている」「企業に勤めており、社内教育に携わっている」など、さまざまな立場の人の、さまざまな想い。まさに、“マルチステークホルダー”の出会いの場です。

米倉誠一郎氏の講義

オープニングで緊張を解いたあとは、米倉誠一郎氏(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)の講義が行われました。テーマは「イノベーション」。日本の現状を知り、イノベーションの必要性を実感する内容でした。プログラムを進めるにあたり、土台となったこの講義。詳細は、後日【講義リポート】としてお届けしますので、楽しみにしていてください。

1日目のランチ

この合宿のお楽しみの一つが、ホテルの食事。なんと、自家農園で採れた野菜を中心としたメニューがいただけるのです。1食目となるランチは、野菜がゴロゴロ入ったカレーライス。あちらこちらから「おいしい!」という声が聞こえてきました。

 

テーブルを囲む参加者のみなさんは、まだ少しぎこちないながらも、笑顔で会話している様子。自己紹介で興味をもったこと、くわしく聞きたかったことをここで質問したり、確認したりしているようでした。

 

実はこの食事風景、回を重ねるたびにどんどん変わるのです。後日のリポートで、その変化を楽しんでください。

自己を探求するワーク

1.チームビルディング

 

いよいよ、1日目のメインプログラムに突入。このワークの目的は、自分のコアにあるものを探すこと。そして、ビジョンを明確にすることです。

 

まずは、共に自己を探求する仲間との、チームビルディングから開始します。5~6名× 4つのチームに分かれ、「思い出」をテーマに語り合い、和気あいあいとした雰囲気を構築。そのあと、メンバーで話し合い、チーム名とスローガンを決定します。

 

以下のようなチームが形成されました。

 

・「暗黒時代」チーム

スローガン:見たくない黒い部分を知ってこそ、明るくすることができる。

・「いただきます」チーム

スローガン:ニュートラルな立場で、いろいろなものをいただく。

・「ルネッサンス」チーム

スローガン:それぞれがもつ“暗黒時代”から“リスタート”する。

・「ドリーム」チーム

スローガン:楽な人生より楽しい人生を過ごす。

 

2.グループワーク

 

今回、参加するにあたり、1つ宿題がありました。それは、日本経済新聞の名物コラム「私の履歴書」のうち、いずれかの人物のものを読んでくること。その感想を、チーム内で述べ合うのが1つ目のワークです。それぞれが感じたこと、考えたことをディスカッションしました。

 

「私の履歴書」のワークのあとは、チームごとの感想を発表。「ほかの人物の履歴書も読みたくなった」「メンバーがなぜその人物の履歴書を選んだのかも知りたくなった」「どの人物も紆余曲折があり、どう動くかによって運命が分かれた」など、さまざまな声があがりました。著名人の過去について、互いに話し合うなかで、「人に興味をもつ」スイッチが入ったようです。

 

また、宿題のほかに、参加者は自分の過去の写真を持参することが課されていました。チームメイトに写真を見せながら当時のことを話す、というのが2つ目のワークです。

 

写真のワークが終わると、再びチーム同士で感想を発表し合いました。「相手の意外な面を見ることで、もっとその人のことを知りたいと思った」「写真を通して他者の存在に気づかされた」など、自分のことをあらためて振り返るとともに、相手のことを知る喜びも実感したようです。チームメイトにどんどん親しみを覚えていく様子が伝わってきました。

 

3つ目のワークは、“仕事”について振り返り、体験を語り合う、というもの。さすがに、話しているとき、みなさんの目が生き生きしていました。からだはここにありながら、心は職場のほうに向けられます。仕事に誇りをもっている人たちが集まっているのだと、実感し合った瞬間です。

 

3.「私の履歴書」の作成・共有

 

グループワークのあとは、個人ワークに移りました。「自分の原点」をテーマに自分史を作成する、すなわち「私の履歴書」を書く、というものです。ワイワイ楽しく行ったワークから一変、じっくり黙々と自分を見つめるワークに。夕食のあと、グループ内で発表し合う旨が告げられました。

 

そして、「私の履歴書」発表の時間。チームごとに場所を移動し、チームメイトだけの空間へ。各チームに1・2名のファシリテーション役が付き、発表会を進行しました。それぞれが作成した「私の履歴書」。それを、“今日”という一日を共にしたメンバーと、共有したら…

緊張感と拍手に包まれ、笑いあり、涙ありの空間が創出されました。

 

誰かが自分をさらけ出せば、ほかの誰かも自分をさらけ出せる。そして、仲間の新たな一面に触れ、そこに同調や共感が生まれる。そんな、温かい時間が流れていました。

 

チームでの発表が終わると、「ほかのチームにも聞いてほしい」という履歴書を選定。再びもとの部屋に戻り、各チームから1名ずつ、全体で発表を行いました。

 

履歴書の内容は、当然のことながら十人十色です。「話しづらいことも、大自然のなかだからこそ、また、受け入れてくれる人がいたからこそ話せた」という人や、「ずっと心に秘めていた、社会や学校に感じている課題を明かすことで、共感してくれる仲間を見つけることができた」という人、「非現実的な環境だったからこそ、家族とは、というテーマに向き合うことができた」という人、「社会から逃げていた自分が、やっと自分の足で歩み始めた」と、前を向き始めた人…

 

それぞれが自分の基盤を確認し、未来へ向かう準備を整えました。

 

最後は、全員が一言ずつ、本日の感想を述べ合いました。「自分と向き合えた」「1日目だけでも、もう参加して良かったと感じている」「職場への愛しさを感じられた」「明日も楽しみ」と、前向きなコメントばかりが飛び交いました。

 

夜空には、無数に輝く星。

2日目のプログラムに大きな期待を抱きながら、キャンプは1日目の就寝の時間を迎えました。