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  • 未来教育リポート
  • 2015.07.05

誰しも不安な受験だから、況んや海外をや! 留学フェローシップ

「海外大学進学」と聞くと、交換留学や海外大学院への進学というイメージが強いのではないでしょうか。しかし近年になって、ハーバードやイェールなど、大学から海外に”(入試を突破して)進学する”生徒が目立ち始めています。

 

ところが、日本全体において高校生が海外大学進学という選択肢を考えている状況にあるかというと、そうではありません。2012年実施のNHKによる全国の中・高校生1800人へのアンケートにて、「あなたは, 将来, 外国に留学したいですか。それとも留学したくないですか。」という質問に対し、高校生は「どちらかといえば,  留学したくない:15.1%、留学したくない:56.7%」と回答しています。進学できること自体知らなかったり、周囲の理解が得られないなどが原因でしょう。

 

このような現状を憂い、海外大学進学を志望する日本の高校生を現役の海外大学進学生たちが支援する「留学フェローシップ(以下「留フェロ」)」というNPO法人があります。今回は同団体の加瀬彩乃代表(コロンビア大学1年生 2015年6月時点)を取材しました。

「留フェロはコミュニティベース」、その心は?

留フェロが立ち上げられたきっかけを教えてください。

本企画を推進するにあたり原動力となったのは、「高校生に幅広い選択肢をもってもらいたい」という思いです。

現在、多くの日本の学校では進学情報が極端に国内の大学に限られていて、海外に進むための指導やアドバイスを受けることができません。留フェロが立ち上がった後、大学生の知人に「一瞬考えたけれど、英語力が足りないから無理だろうとすぐ決めつけて諦めてしまった」と言われました。

また情報不足・リスクの高さから海外進学に反対する先生すらいます。たとえ学生が世界に羽ばたいて挑戦したいと考えていても、それを後押しできる大人が周りにいないのが現状です。

このような理由で海外進学をあきらめてしまうのはあまりにもったいない、なんとかこのような生徒を支援したい、そう思ったのがきっかけです。

 

より多くの高校生に海外進学をしてほしいということですか?

海外進学をする高校生を増やすというのではなく、選択肢としてあることを知ってもらい、高校生が自分にとって最適な道を選ぶのをお手伝いするということです。

留フェロの理事は海外大学進学生と日本の高校教師の方々約15人とで構成されています。高校生が現役進学生や留学を支援してきた先生方と出会えるような、コミュニティベースで情報伝達や留学支援をしていくのが留フェロの役割です。

 

「コミュニティベース」とは何ですか?

私の海外進学の経験から言えるのは、進学された先輩にたくさん助けてもらったということです。彼らの個人体験から、米国大学の様子や出願準備の仕方など多くのことを学びました。留フェロではこのような先輩後輩の関係を築いていきたいです。

また、海外進学をする生徒が少ない中、同じ道を進む同士を見つけることも大きなチャレンジです。切磋琢磨し助け合う仲間、そしてコミュニティをつくっていきたいと思っています。

そして、志を持つ高校生が周りの大人の理解とサポートを得られるような環境を整えることも必要だと考えています。学生と教員がタッグを組むことで、より包括的に進学支援を行うことを目指しています。

 

「周りの大人」に保護者は含まれていますか?

含まれています。保護者の理解を得ることが重要なのは、海外進学をする際に金銭的なハードルが存在する場合が多いからです。

 

ハーバードやプリンストンなどの米私立大学は、学費・生活費が合わせて年間700万円と、日本に比べ格段に高いと聞いています(そのため学内で保護者の所得に合わせた学費控除システムや奨学金制度が整っています)。

また、両親からも理解を得られると、生徒は進学を考えるにあたってより安心感が得られますね。

 

 

留フェロの目標を教えてください。

留フェロは二つの目標を掲げています。一つ目は現役進学生による進学支援、二つ目は世界で活躍する人材を育てる新たな授業方法の開拓です。

 

二つ目に関して、具体的にどのような活動をされるのですか?

海外大学という選択肢の理解を通して、自己理解や自己表現、また社会との関わり方などを能動的に考え実行する力の必要性を訴え、それを高校で実践していけるようなプラットフォームを構築します。

昨年はあまり実施しませんでしたが、今年からは教員研修などを含めたミニキャンプ事業と、高校生と大学生が共に地域の課題を考えるプロジェクト学習事業などを展開していきます(詳細は後述)。

オンラインエッセイ添削システム!?

現在までは、どのような事業を行ってこられたのですか?

昨年度は、先ほどの一つ目の目標に対して、留学ナビ・留学キャンプ・留学キャラバンの三つを実施しました。

 

留学ナビはHPでの海外進学に関する情報収集・発信事業です。出願方法や受験体験談などを掲載しています。

 

留学キャラバンでは、進学生数人がキャラバン隊を結成し、2週間かけて全国13カ所を巡りました。自身の経験に基づきながら海外進学という選択肢について発信し、さらにワークショップ形式やインタラクティブなプログラムを混ぜて、高校生と共に考えるイベントを開催しました。

(写真は島根県の松江北高校にて)

 

留学キャンプでは、海外大学進学を志す高校生を対象に、京都で4泊5日のサマーキャンプを実施しました。出願時に重要となるエッセイ指導を切り口に、自己分析や自己表現といったスキルを身につけ、大学生と共に自分の個性や将来の道について考え、理解することを目的としています。

 

エッセイは海外大学入試に必要不可欠ですが、その書き方・内容の指導が日本ではほとんどされていない代物ですね。

(左から3番目が加瀬代表)

 

どのような方法で個性などを考えたのですか?

自分の過去を振り返って点と点を繋げる作業をしてみたり、次はそれを自分の将来に繋げてみたり。または一対一でペアを組んで、紙芝居方式で自分について表現してみたり。インタラクティブなワークショップを通して自己分析を行い、次はそれを文面で表現する特訓をしました。

 

他の人の客観的な視点を取り入れることで、自分をより深く把握できますね。

 

またキャンプ参加者を対象に、昨年の11月から12月にかけてMENTEEというオンラインエッセイ添削システムを試験導入し、留学キャンプで知り合った大学生が高校生のエッセイ添削を行うプラットフォームを作成しました。

これだといつでも気軽にチェックしてもらえるので、寸暇が惜しい受験生にとってはとてもありがたいですね!

 

 

加瀬さんの中では、今までの活動で何が一番印象的ですか?

昨年は留学キャンプの実行委員長を務めていたので、留学キャンプに一番思い入れが強い気がします。しかし、そこで築かれたコミュニティのその後の発達が一番の成果物だと思っています。

海外大学進学を志しても、サポートが受けられる学校や塾が無いため、キャンプで仲良くなった学生メンターと連絡をとりながら、9月から12月にかけてエッセイを仕上げていました。私自身も数人の高校生から送られてきたエッセイにコメントをつけて返す作業を何回も重ね、納得のいくエッセイを仕上げるお手伝いをさせていただきました。

また、参加した高校2年生の多くは進路に迷っていて、キャンプ後も海外にいるメンターとスカイプなどで、国内とアメリカどちらに進学するか、もしくは高校留学をしたいが色々相談がある、など自身の将来について語り合う機会が幾度もありました。

さらに、高校生と大学生の繋がりに限らず、高校生同士の関係も深まり、海外進学仲間や大事な相談相手となっているようです。

 

キャンプに参加した高校生は、その後も同士・大学生と相談しながら受験を進めていたのですね。

代表として、留フェロに思うこと

加瀬さんが代表になられた理由を教えてください。

私も海外進学をした先輩のサポートがあってここまで来られたので、自分の経験から何か還元したいという思いがあり活動を始めました。これは「恩」に感謝する気持ちだと思っています。今も留フェロのミッションを次の代へと繋げ、持続するコミュニティの育成を目指しています。

 

自分の先輩から受けた「恩」を、自分の後輩へとバトンタッチしている感じですね。

一度でも留フェロに関わった学生や、少しでも興味を持った学生などによるオープンで持続するコミュニティを育成していくことも、留フェロが大切にしていることの一つです。

 

他のメンターの「恩」に感謝する気持ちも大切にしているということですね?

その通りです。また、活動できる場を与えるだけでなく、進学生らも切磋琢磨し合えるような。横と縦の繋がりを構築したいという思いもあります。

2015年の留フェロ

最後に、留フェロの今後の展開を教えてください

 

留学ナビ・留学キャラバン・留学キャンプに加え、ミニキャンプとプロジェクト学習が入ります。

 

留学ナビでは、新たにオーストラリアの大学進学に関する情報を掲載していきます(http://ryu-fellow.org/navi/navi.html)。

 

留学キャラバンは6月6〜21日に実施し、計11人のキャラバン隊で14カ所を回ります。昨年に比べより多様なバックグラウンドを持った学生が集まったので、(http://ryu-fellow.org/caravan/caravan-2015.html)さらに面白いプロジェクトになると思います。

 

留学キャンプは8月3〜7日で、昨年と同じく京都で実施します(http://ryu-fellow.org/camp/camp-2015.html)。

 

7月下旬には4カ所でミニキャンプを実施します。キャラバンは3時間の枠ですが、本企画は1日かけることで、より高校生と密に触れ合った進学相談や、自分の将来を共に考えられる事業となっています。

 

そしてプロジェクト学習を、5月下旬・8月中旬・8月下旬の計3回実施します。1泊2日かけて、大学生と高校生で各地域の課題などを理解し、その解決策の模索を通して、自分と社会の関わり方を考えたり自分の将来像をつくるきっかけになればと思っています。

 

まだまだ新しい試みをしていく可能性は十分にあるので、留フェロのFacebookページを要チェックです!

 

留フェロは、より多くの高校生と出会い、現存の教育関係者の方々と協力して日本の教育に新風を吹き込みたいと思っています。どうかご協力。ご支援をお願い致します。

受験生にとってのコミュニティベース、その心は?

留フェロは、単なる受験テクニックを教えるのではなく、受験生を勉強面でも精神面でもサポートすることを目指した取り組みがされています。

 

私自身がそうであるため強く感じるのですが、多くの高校生は勉強、進路、人間関係などの問題で日々悩みながら生きています。なおさら、海外受験をするとなると周りに理解者や共に志す仲間が得られづらく、より肩身が狭くなるのでしょう。ですので、全国の同じ孤独を感じている仲間や、応援したいと言ってくださっている憧れの先輩に出会える機会はまたとなく感じると思います。しかも、進学を考えている高校生と現役進学生との距離は近く、いわゆるナナメの関係として気軽に相談できる先輩という存在は、この上なく頼もしいものではないでしょうか。

 

また、平日は学校に通い、経済的にも独立できていない高校生。日頃は反発しながらも、なんだかんだで周囲の大人の理解が得られないのはやはり不安です。そこまで含めたコミュニティベースで受験を考えてもらいたい、という理念はとても共感できるものがありました。

 

 

 

【参考】

 

NHK, 「中学生・高校生の生活と意識調査」について, https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/yoron/social/pdf/121228.pdf

 

留学フェローシップ, http://ryu-fellow.org/

  • ライター

松田宥野

石川県生まれ。
灘高等学校(平成28年度卒業予定)。

小学校受験を経て石川県の小学校に通い、中学受験を経て北海道の中学校に進学し、高校受験を経て現在は兵庫県で3年目の高校生活を満喫しています。

人と人との地縁的なつながりに将来性を感じ、まちづくりや地域ぐるみの教育に興味を持っています。
灘校と地域をつなぐ試みの一環として、生徒が近隣の小学校で授業をさせていただく「小学校企画」というプロジェクトで、一年間代表を務めていました(現在は後輩に引き継がれています)。

大学では、どうしたら地域ぐるみの教育をより良くできるのかを学びたいと思っており、日本の大学を経て、留学をしながら海外の地縁的教育事情を勉強したいと考えています。

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